『新しい共通テスト 国語対策問題集 実践レベル』 風に紅葉

敬意の方向

1
傍線部「語らせ給へば」の「せ給へ」の文法的説明として最も適当なものを選べ。(専修大)

女房「夢現、人に語らぬことなれども、御身なれば申すなり。うはの空におぼしめし、他人に漏らし給ふなよ。かの将門は御かたち七人にて御振るまひ変ることなしといへども、本体には、日に向かふ、灯し火に向かふ時、御影うつり給ふ。六体には影なし。さてまた御身体ことごとく黄金なりといへども、御耳のそばに蟀谷(こめかみ)といふ所こそ肉身なり」と語らせ給へば(俵藤太物語)
① 「せ」―使役 「給へ」―作者から藤太への敬意を表す尊敬語

② 「せ」―尊敬 「給へ」―作者から小宰相への敬意を表す尊敬語

③ 「せ」―動詞の一部 「給へ」―作者から藤太への敬意を表す尊敬語

④ 「せ」―使役 「給へ」―作者から小宰相への敬意を表す謙譲語

⑤ 「せ」―尊敬 「給へ」―作者から藤太への敬意を表す尊敬語

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解答 ②

2
傍線部「御こと」の敬語表現は誰から誰に対するものか。最も適当なものを選べ。(学習院大)

*北野と世を政りごたせ給ふあひだ、非道なる事を仰せられければ、さすがにやむごとなくて、せちにしたまふ事をいかがは、とおぼして、「この大臣のし給ふことなれば、不便なりと見れど、いかがすべからむ」と嘆き給ひけるを、なにがしの*史(し)が、「ことにもはべらず。おのれ、かまへてかの御ことをとどめはべらむ」と申しければ、「いとあるまじきこと。いかにして」などのたまはせけるを、「ただ御覧ぜよ」とて、座に着きて、こときびしく定めののしり給ふに、この史、*文刺(ふんさし)に文挟みて、*いらなくふるまひて、この大臣にたてまつるとて、いと高やかに鳴らしてはべりけるに、大臣、文もえ取らず、手わななきて、やがて笑ひて、「今日は術なし。右の大臣にまかせ申す」とだに言ひやり給はざりければ、それにこそ菅原の大臣、御心のままに政りごち給ひけれ。(大鏡)
*北野…右大臣菅原道真。
*史…太政官の下級役人。
*文刺…貴人に文書を挟んで差し出すための杖。
*いらなく…大げさに、仰々しく。
*鳴らして…おならをして

① 作者→帝
② 作者→時平
③ 作者→道真
④ なにがしの史→時平
⑤ なにがしの史→道真
⑥ 御随身→時平

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解答 ④

3
傍線部「まゐらせ」は、誰に対する敬意か。最も適当なものを選べ。(立正大)

*老人、「まことにあなめでたの物の香や。京人(みやこびと)はなほいとこそみやびかにいまめかしけれ。*天下にいみじきことと思したりしかど、*東国にてかかる薫物の香は、えあはせ出でたまはざりきかし。この尼君は、住まひかくかすかにおはすれど、装束のあらまほしく、*鈍色(にびいろ)、青鈍(あをにび)といへど、いときよらにぞあるや」などほめゐたり。*あなたの簀子より*童来て、「御湯などまゐらせたまへ」とて、*折敷(をしき)どももとりつづきてさし入る。(源氏物語)
*老人…浮舟に仕える、年老いた女房。
*天下にいみじきことと思したりしかど…この世で(薫物が)一番上手だとお思いでらっしゃったが、の意。浮舟の母のことを指して言っている。
*東国…浮舟とその母は、長いあいだ常陸(ひたちの)国(現在の茨城県)で暮らした。
*鈍色、青鈍…出家した者の用いる色。
*あなたの…尼君のいる部屋のほうの。
*童…尼君に仕える女童。
*折敷…食器をのせる縁つきの盆。

① 薫
② 若き人
③ 尼君
④ 老人
⑤ 浮舟

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解答 ⑤