『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』授業実践例紹介 兵庫県立伊丹高等学校 山内淳史先生

生徒の「説得力のあるライティング力」を伸ばす指導方法

令和5年12月,大阪にて「高校における『英語指導』のこれからを考える」というテーマで弊社主催のセミナーを行いました。本稿では,第一部で行われた『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』を実際に使用している授業の事例紹介から,兵庫県立伊丹高等学校の山内淳史先生による生徒の「説得力のあるライティング力」を伸ばす方法をご紹介します。

◯学校のご紹介
兵庫県にある県立伊丹高等学校は,1902年に創立された122年の歴史を持つ伝統校です。2015年にはSGH(Super Global High School)の認定を受けています。私服登校が許されている自由な校風が魅力です。また,校舎には陸上自衛隊駐屯地が隣接しており,訓練の音が聞こえてくることもあるそうです。「ある意味,日本で一番安全な高校かもしれませんね」とはにかむのは,そこで教鞭を取る山内淳史(やまうちあつし)先生。特色選抜クラス(GLiS: Glocal Leaders in Science)の40名の生徒を受け持っています。


文法中心の授業からの脱却

旧課程の「英語表現」では文法教材のような教科書を使っていたという山内先生。リスニングに取り組み,例文の文法を確認し,問題を解き,文法事項を含む完全に型の決まったペアワークをして,ワークブックの問題を解く……と,文法問題の演習が中心だった授業を「文法を教えるにしても中途半端だったと思うし,生徒が夢中になれるような活動をできていたという手ごたえもない,“答え合わせ”のような授業をしていました」と山内先生は振り返ります。

令和5年度から「論理・表現」を教えるようになり,入試問題や4択問題を解くためではなく,英語を話したり書いたりと実際に使う際に自信を持てるように文法を学んでほしい,という思いで『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』を採択したそうです。

それからは無機質な授業にならないよう,生徒が楽しめるような活動を取り入れて授業に臨んでいるといいます。


動画で予習!?

1 Unitを3回の授業で進めているという山内先生。予習と復習をしてもらうことを前提として授業を進めています。予習では,文法参考書『総合英語 FACTBOOK』についている大西泰斗先生の動画を視聴してもらいます。動画は10~15分と長すぎず短すぎないちょうどよい長さで要点を説明しており,生徒たちもしっかり視聴してくるそうです。その後,授業で動画の例文の解説と問題演習に取り組み,活動に入ります。授業後の家庭学習では,ワークブックの問題演習やデジタル教材のEnglishCentralで音読の復習をしてもらいます。


ライティングテストで明らかになった,真面目な生徒の意外な弱点

山内先生の授業では,定期考査とは別にライティングテストを行っています。あるテーマを与えて家で調べてきてもらい,テストの場で肯定か否定かのどちらかの立場を与えて80 words程度の文章を書かせるというものです。そこで先生は,“真面目だけど学力はそれほど高くない”という生徒たち特有の弱点を目の当たりにしたのです。

AI Chatbots should be banned in school. というテーマで書かせたところ,一生懸命家で調べてきたのはうかがえる文章なのに,内容がどうにも浅いのです。例えば,First, imagination is very important in the world today. We should think about imagination. AI Chatbots cannot imagine. (想像力は大事だ。想像しなければならない。AIチャットボットは想像できない。)と,同じことを繰り返し書いてしまい,理由を深めるところが書けず説得力に欠ける文章になってしまうのです。

単語は頑張って覚えるし予習もしてくるけれど,何をどうやって書いたらいいかわからない――生徒たちの戸惑いを受け山内先生は,『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』で提唱されている“OREO”という手法を徹底的に教えることにしました。


OREO指導に力を入れる

OREOとは,Opinion(意見・主張)・Reason(理由)・Example/Explanation(具体例/説明)・Opinion restated(主張の念押し)の頭文字を取ったものです。これらを意識し,順番に書いていくことで意見を明確に示す文章が書けるようになるのです。

前述の生徒に代表されるように,生徒たちが苦手としているのはR(Reason)とE(Example/Explanation)の部分。Eが書けなかったり,RとEが混ざってしまっているケースが多く見られました。

OREOを意識した文章の書き方を知らないと英語以外のところでも将来的に困る場面が出てくるのではないか,と危惧した山内先生はOREOの指導に力を入れることにしたのです。


一度日本語で考えさせてみる

そこで,山内先生はまず日本語でOREOの感覚をつかんでみようという授業に取りかかりました。選挙の年代別投票率の表を見せ,「10代と30代は40%台なのに20代で一度投票率が30%台に下がるのはなぜですか。ペアで話し合ってください」と日本語で討論してもらいました。日本語なので「20代は新入社員やから忙しいんやないか」「日曜も働いてるんちゃう?」「18歳は1回目の選挙やし行きたいから高いんかな」など活発に意見が出ます。

ここで出た意見を「20代の投票率は低い(O)」「なぜなら20代は忙しいからだ(R)」「20代は社会人になりたてで仕事に忙しく,選挙のことを忘れがちだ(E)」「だから20代の投票率は低いと考える(二度目のO)」と振り分けていき,生徒たちにOREOをわかりやすく学んでもらいました。

生徒たちは自分で理由を考えるのが楽しいようで,生き生きと授業に取り組んでいたそうです。


Unit 8におけるOREOの活用

Unit 8 How do you decide which products to buy? でも日本語を用いて生徒に意見を聞いていきます。まず英語で,チョコレートを買いたいがなるべく予算をかけたくないAさんと,高いフェアトレードのチョコレートを売りたいBさんに分かれて話す活動を行います。その後,日本語で安いSnowman-shaped chocolateか高いfair trade chocolate barのどちらを選ぶか「正直あなたはどっちが欲しいん?」と生徒に聞いてみます。すると「クリスマスプレゼントで板チョコなんて渡したら友達に引かれるからスノーマンがいい」と生徒目線での正直な意見が返ってきます。しかし,「これがテストだったら?」と問うと「理由が書きやすいからフェアトレードにする」と答えてしまいます。

そこで山内先生は,ペアになった生徒にじゃんけんをさせて負けた方に強制的にスノーマンを選んだ場合のライティングをさせることにしました。スノーマンをテーマに書く場合,「デザインがかわいいから」「200円安いから」というような理由しか出てこずExample/Explanationを加えにくいのですが,生徒たちは頭をひねって「高校生に200円は大きい金額だ。20人にプレゼントを買うなら4000円の差は大きい」などと続けていました。

また,フェアトレードで書くことになった生徒には「フェアトレードの製品は有害物質を抑えるような作り方をしているので健康にいいんだよ」などと背景知識を教えることで,意見に深みを出させているそうです。

💡ここがスゴイ! by編集部
R(Reason)とE(Example/Explanation)にどういう内容を入れると一貫性のある文章になるのか,生徒たちがもっとも頭を悩ませるところです。山内先生は生徒からさまざまな意見を引き出してそれをOREOに振り分けて論理的な文章を作って見せていました。論理的な思考の流れを理解して体得するには,このようにたくさんの論理的な文章に触れることが大切であり,近道だと思います。山内先生の指導を受け,生徒たちに「相手をうならせる内容を話したい!」という気持ちが芽生えていて,OREOの型を使って楽しそうに論理性や表現力を身につけていく様子が見て取れました。


背景知識が得られるFACTBOOK

「英語コミュニケーション」において活動に取り組んでいても,「論理・表現」での活動に悩んでいる学校は多いのではないか,と山内先生。『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』ではUnit 8のような「フェアトレード」や,Thinking Logically 1の「田舎暮らしと都会暮らしどちらを選ぶ?」のような現代的なテーマが豊富に用意されていて,社会における多彩な背景知識が身につくといいます。このような社会背景を考えさせる言語活動に取り組みやすいのが『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の強みだと感じているそうです。


OREOで変わった!生徒の処理能力

OREOを活用して活動を行っているうちに,生徒にある変化が生まれました。授業中にタブレットと教育クラウドサービスの「ロイロノート」を使って,その場で生徒にThe place I want to visitについて話すための型を配信すると,生徒は15秒ほどで自分の行きたい場所について話すことができました。日頃からOREOで文章の定型パターンを学んでいるおかげで生徒の英文の処理能力が高くなったのではないか,と山内先生は顔をほころばせました。


日頃からさまざまな場面でOREOを意識して生徒に話させているという山内先生。「OREOのE(Example/Explanation)で人生経験が問われるんだよ,自分が経験したことで相手をいかに説得できるかというところが楽しいんだよ」と生徒に語りかけているそうです。生徒たちはOREOで考える習慣が身について,相手を納得させられるような文章を話したり書いたりできるようになったといいます。山内先生がウェビナーで上映した授業風景では,活発に意見を交わし合い活動に取り組む生徒たちの楽しそうな様子が見られました。論理性や表現力をしっかりと育もうと心がけている山内先生に,生徒たちは自然と影響を受けて力をつけてきているようです。

今回の記事では,兵庫県立伊丹高等学校の山内淳史先生による『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』のOREOの活用を中心としたライティング授業の実践例をご紹介しました。本サイトでは,今後も「論理・表現」の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例を紹介していく予定です。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

<桐原書店・英語編集部>


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