『FACTBOOK論理・表現Ⅱ』授業実践例 茨城県立下館第一高等学校 竹内綾華先生
論理的に書くためのプロセスを指導する~Thinking Logicallyを使った指導と評価~
令和5年12月,桐原書店本社にて「高校における『英語指導』のこれからを考える」というテーマで弊社主催のセミナーを行いました。本稿では,第一部で行われた『FACTBOOK 論理・表現』を実際に使用している授業の事例紹介から,茨城県立下館第一高等学校の竹内綾華先生による,Thinking Logicallyを使って論理的に書くためのプロセスを指導する方法をご紹介します。
◯学校のご紹介
茨城県にある県立下館第一高等学校は,今年度創立100周年を迎えた地域の伝統校で,令和2年度から附属中学校を併設しています。1学年普通科6クラスで構成されており,素朴で素直な生徒が多い学校です。そこで教鞭を取る竹内綾華(たけうちあやか)先生は初任校としてこちらで5年目,本年度高校2年生のご担当で,昨年度の『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』に続けて現在『Ⅱ』の指導をされています。
論理・表現における教科書の扱い方と進度について
『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の構成は,Small Talk, Listen(トピックの背景知識)→Speak①, Speak②, Write→FACTBOOK GRAMMARという,英語を実際に使ってから文法を学ぶ流れが非常に大きな特徴です。2022年から始まった新課程では,教科書の構成と評価方法がガラッと変わったことを受けて,まずはこの教科書が意図するとおりにやってみようと同僚の先生と話し,1年生の前半は教科書の流れに沿って,上記のすべてを扱ったそうです。しかし,時間が足りなくなったため,後半からはWritingの扱いに変化を持たせたとのことです。文法指導は教科書のUseful Expressions, FACTBOOK GRAMMARを扱いました。
1年からの進度は以下のとおりです。
1年4月~:『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』Unit 0, 1, 2, Thinking Logically1, Making a Speech
教科書の構成どおりすべて扱う
1年10月~:Writingの扱いに変化を持たせる
Write MoreはUnit 4, 9のみ,Thinking Logicallyは2, 4
2年4月~:『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』 Unit 7~10
2年9月~:『FACTBOOK 論理・表現Ⅱ』 Unit 1~
文法だけを扱うUnit, 言語活動を一部扱うUnitに分けて使用
『Ⅱ』のThinking Logicallyは「要約」のところだけを使用予定
論理的に書くためのプロセスの指導:Thinking Logically
『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』ではThinking Logically(以下TL)で論理的な文章を書くためのプロセスの指導を丁寧に行ったそうです。TLは2つのUnitを学習した後に,関連するトピックについて「意見文」を書く単元です。通常Unit外の活動ですが,直前のUnit学習と関連する,応用的・論理的で説得力のある文章を書くための支援が手厚く,
「先生,俺,これなら書けます!」
という言葉を,英語が苦手な生徒からも聞けたことがとても印象的でした,と竹内先生は言います。一見難しく思われがちなTLを使って,生徒に「書ける」という自信を与えることができた竹内先生の授業とは,どのようなものだったのでしょうか。
Thinking Logicallyの構成
TLの構成は,最初に背景知識を活性化し,パラグラフの構造を学び(OREOの流れを学ぶ),そのトピックに関してどういう議論があるのかを学びます(これはWritingのネタになります)。その次からが書く作業で,アイデアを出し,アウトラインを考え,ドラフトを書き,リバイズする視点を学んで自分の文を完成させるという流れになります。
実際のTL指導例(『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』)
まず最初は,トピックについてSmall Talkで扱い,背景知識を活性化させます。この時ALTと一緒に生徒に話しかけてモチベーションを上げることもあります。次にLogical Writing Tipsで,「主題文→支持文→結論文」の流れを押さえ,さらにOREOの構造を教えます。ここで使用している指導用パワーポイント(Lesson Supporter)は,パラグラフの構造を視覚的に理解するのに役立ちます。


ここから,ワークシートを用いて書く指導を行います。最初のアイデア出しを非常に重視しているという竹内先生,「将来も今の町に住み続けたいですか」というテーマについて,まず先生自身によるアイデア出しと整理(Organizing)の具体例を示してから,生徒に書いてもらいます。生徒が書いている間,先生は机を回って突っ込みを入れたり,ヒントを与えたり,丁寧に対話をしながら生徒にアイデアを出させます。次に出したアイデアを英語にし(Outlining),それにつなぎ言葉を加えてパラグラフの下書きを書く(Drafting)ところまでを,やはり先生自身の具体例で解説してから生徒に書かせます。最後は教科書にあるImprovingのポイントを説明して,生徒にパラグラフを仕上げさせます。



💡ここがスゴイ! by編集部
Organizing ➡ Outlining ➡ Draftingでは,竹内先生自身の具体例がとにかくわかりやすい! それを示した上で生徒に自分自身の意見を書かせ,さらに生徒が書く際には,机を回って生徒と対話をしながら,論理のつながりやわかりやすい書き方について丁寧に指導を行っているとのことでした。先述の「先生,俺,これなら書けます!」という生徒の言葉は,TLの構成に沿いながら,一人ひとりの生徒にきめ細かく寄り添った先生の指導があってこそだと思いました。
ライティングの評価
「形成的評価」については,書いているときは,生徒が書く内容にとにかく興味を持って対話しながら指導し,特にOrganizingでの論理性を評価するという点を重視しています。一方,記録に残す「総括的評価」は,TLについては指導用教材にある英文ルーブリックをALTに示して評価してもらい,あとは考査で出題して教員が採点しました。
現2年生への指導と評価
2年生の9月の定期考査で,「英語を上達させるためのよい方法についてOREOの構造であなたの意見を書きなさい。」という問題を出題しました。授業では,『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』のUnit 9 “A variety of ways to improve your English.” の Speak①「お互いの考えるよい方法を具体的に説明し合うことができる」というSpeaking活動のみを行い,Writing活動はしていませんでした。つまり,授業でSpeakingをした内容を基に,テストでWritingを測ったわけです。またテスト前に,どのトピックで出題するかは伝えず,いきなりテスト本番を行うことで,本当のパフォーマンステストになるのではないかと考えたそうです。
💡ここがスゴイ! by編集部
授業でSpeaking活動を行ったテーマでテストのWritingを行う,すなわち授業で扱った内容をベースに,別の形式のパフォーマンステストで問うことによって,本当のパフォーマンステストとして評価するというこの方法は,他のUnitにも応用できる指導方法だと思います。セミナーに出席した多くの先生方にとっても,『FACTBOOK論理・表現』教科書を,より柔軟に使用するための大きなヒントになったのではないでしょうか。
採点基準に関しては,ルーブリックを作成し,ローカルエラーではなく,グローバルエラーだけを見て,あくまで論理や内容の適切さに関する問題として評価しました。実際の答案では,OREOの構造はほとんどの生徒ができており,文法的なミスも伝わらないようなものはあまりなかったそうです。

文法指導と模試の推移
このようにWriting指導を重視してきた中で,文法指導はどのように行ってきたのでしょうか。まず模試の成績の推移で見ると,文法・語法問題については,1年7月の成績が過去5年間で最低だった現2年生ですが,11月になるとさらに全国平均との差が,特に中上位層で目立ったそうです。しかしこの教科書を信じてやり続けた結果,2年11月の成績は昨年,一昨年を超えて,過去5年で3番目に上がりました。中上位層の全国平均との差が埋まってきており,上位層は前年度生よりも対全国平均でよい結果になったとのことです。
文法指導は以下のように,常に多方面から行っているとのことです。辞書指導についても力を入れており,辞書アプリを使って辞書を使いこなせるよう指導しています。

今後の指導に向けて:生徒にアウトプットさせることで見えてくる課題
Writingについては,かなりしっかり書けるようになってきた生徒でも,本論の厚みに比べて結論文が薄く,何を書いても使えるような幼稚な結論文になることがまだ多いそうです。またSpeakingでは,ディスカッションやディベートで相手の言ったことを引用することが不得意で,竹内先生はこれらについて,要約・言い換えの力が足りないからではないかと考え,『FACTBOOK 論理・表現Ⅱ』のThinking Logicallyを用いて要約トレーニングをしていく予定とのことでした。
今回の記事では,茨城県立下館第一高等学校の竹内綾華先生による『FACTBOOK論理・表現』の授業について,特にThinking Logicallyの実践例を中心にご紹介しました。本サイトでは,今後も「論理・表現」の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例を紹介していく予定です。最後までお読みいただき,ありがとうございました。
<桐原書店・英語編集部>
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