『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』授業実践例紹介 大阪府立四條畷高等学校 湯浅温子先生
fluencyを育てながら,accuracyを伸ばす指導方法
令和5年12月,大阪で弊社主催のセミナーを行いました。テーマは「高校における『英語指導』のこれからを考える」。第一部では実際に『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』を使っている授業の事例紹介を2校,第二部では大西泰斗先生にご講演いただき,大きな学びを得ることができました。本稿では,第一部の教科書の事例紹介のうち,四條畷高等学校の湯浅温子先生より伺った「生徒のfluencyを育てながら,accuracyを伸ばす指導方法」についてご紹介します。
〇学校のご紹介
大阪府にある雁屋遺跡に囲まれた120年の歴史を持つ伝統校,大阪府立四條畷(しじょうなわて)高等学校。SSHにも指定されている進学校です。そこで教鞭を取る湯浅温子(ゆあさあつこ)先生は,勤続3年目,高校2年生の担任をされています。今の高校2年生はちょうど新学習指導要領1年目に入学した生徒たち。湯浅先生はカリキュラム作りに悩んだといいます。
英語は使わないと意味ない!―まんべんなく英語力をつけるカリキュラム作成―
新課程に向けて観点別評価の研修を受ける中で,湯浅先生がたどりついたスローガンは『英語は言語だから,使わないと意味ない!』というものでした。生徒たちが実際に英語を使いこなせるようになるにはどうすればいいか考えた結果,評価の3観点を縦軸,4技能5領域を横軸としたマトリックスを作成し,15マスそれぞれに該当するカリキュラムを当てはめて授業計画を作成したのです。

意外と知られていない,FACTBOOKとHearteningの関係
湯浅先生の学年では『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』と『Heartening英語コミュニケーションⅠ』の教科書を採択しました。最初に湯浅先生が採択したいと思ったのは『FACTBOOK Ⅰ』でした。生徒たちが「伝えたい」と思えるような目的・場面・状況が明確に設定されているというのが理由です。次に選んだ『Heartening Ⅰ』が,実は『FACTBOOK Ⅰ』と内容が関連していることを知り,使いやすいと感じたそうです。おかげで評価のマトリックスの制作もスムーズに行うことができ,それぞれの教科書の内容を織り交ぜたパフォーマンステストも実施することができました,と湯浅先生は語ります。

💡ここがスゴイ! by編集部
『FACTBOOK Ⅰ』と『Heartening Ⅰ』を相当読み込んでくださったのがうかがえる年間計画案でした。この2冊は同時期に同じテーマや話題を学習できるように設計しています。湯浅先生はトピックの関連性に加え,4技能5領域のどういった能力を,どの時期に指導して評価すべきかを教科書をベースに緻密に考えていらっしゃり,体系立てられた計画のもと授業を行っていました。
Speak⇒Grammar⇒Writeの順に教える
四條畷高校は65分授業で,1Unitを3時間かけて行います。教科書どおりに進めるのではなく,1時間目にSpeak,2時間目にGrammar,3時間目にWriteを中心に据えて授業を進めます。はじめにSpeakを行い,生徒に「話したい,表現したい」という気持ちにさせ,fluencyを育てていきます。Speakで上手くいかない経験をさせることで,良いモチベーションを維持したままGrammarを学べるとのことです。それから独自のカリキュラムを加えたWriteの授業を行い(後述),パフォーマンステストを実施します。

1時間目・Speak―自然な流れで授業に誘導する
セミナーでは,湯浅先生にUnit 8:How do you decide which products to buy?を例に,Speakの模擬授業をしていただきました。
(1)最初に先生が文脈を繋げながら生徒を引き込む形で英語の会話をします。(例:冬と言えばクリスマスだよね,クリスマスプレゼントにチョコレートが欲しい,この予算で健康的なチョコレートが欲しい,など)その際,このUnitで使う重要単語“budget”やUnitで学ぶ比較級などを自然に織り交ぜておきます。また,“budget”と言いながら実際に500円玉を見せたりしてトークをすることで生徒を惹きつけ,自然にSpeak①に導入します。
(2)Speak①では,Aさんがクリスマスプレゼントを探している客,Bさんがチョコレート店の店員になり,それぞれのMissionを参考にやり取りを行います。生徒がSpeak①に取り組み,「難しい,もっと言いたい」と感じモチベーションが上がったところで,Model DialogueとUseful Expressionsを与えリピートさせます。生徒はそれらを見ながら再びペアワークに取り組み,AさんとBさんを逆転させたり,ペアを替えたりして繰り返します。

(3)65分授業で時間にまだ余裕があるので,ここからが独自の授業。教科書にはないオリジナルのMissionを与えます。ここでは,Aさんに「1000円しかもっていない&高い商品を勧められても2度断る」,Bさんに「説得してフェアトレードの板チョコを売る」という少し難易度を上げたMissionを与えました。
(4)Speakの間に机間指導をしながら面白い表現をしている生徒を見つけておき,前に出て発表してもらいます。ここで湯浅先生は,Aさんに断られて困っているBさんを助ける店員になり,“You said your budget is 500yen. But do you know what fair chocolate is? OK, I’ll teach you.”と即興で入っていき,さりげなくSpeak②に誘導します。また,Bさんを担当している生徒が上手だった場合はAさんの友達役として登場し,「フェアトレード商品って何?」と聞くかたちで誘導します。
(5)同じ形でSpeak②を進めます。授業の中でSpeakのワークはAさんとBさんを逆転させたりペアを替えたりしながら20回以上繰り返します。だんだん生徒も喋れるようになったところで,2時間目のGrammarに進みます。
💡ここがスゴイ! by編集部
・(1)は “Speaking of December, what do you come up with? Yes, Christmas! Last year, did you get present? … I couldn’t get any present. So would you prepare Christmas present for me?” から始まりました。導入は湯浅先生による「お芝居」を見させていただいているようで,これから取り組むSpeak①の世界に引き込まれました。
・(4)Speak①から次のSpeak②の話題に自然に誘導していく例として,湯浅先生がAさんの友達役として登場するパターンと,Bさんと同じ店員として登場するパターンを見させていただきました。生徒たちを楽しませるための演出の妙が随所に散りばめられていました。
2時間目 Grammar-モチベーションが上がったところで文法を教える
1時間目のSpeakでもっと喋りたい,と気持ちが高まった生徒たちに種明かしとしてGrammarを教えます。Grammarを教えるのはこの1時間のみ。生徒の「伝えたい」を育て,手法を教える時間として位置づけています。
3時間目 Write―独自のワークシートで200 words書けるようになる
Writeで書かせる分量が少ないと感じている湯浅先生は,学習したトピックとBACE TALKという独自のワークシートを使った言語活動を取り入れることにしました。

BACE TALKでは,英語で話し続ける人(Boke)を中心に,相槌を打ったり質問したりする人(Asker),話者の語数をカウントする人(Counter)の3人グループでワークシートに記入しながら役割を変えて3回繰り返し,4回目に話者を評価する人(Evaluator)が加わります。グループワークの後,最終的に10分間で文章を書かせます。
今回のWriteでは,ファストファッションの是非についてBACE TALKを行い,文章を書かせました。Unit 8に入る前に『Heartening Ⅰ』のLesson 7 Behind the Price Tagを学習していたため,Unit 8の内容とも関連しており授業がやりやすかったといいます。また,Speakで使った表現をそのままWriteに活かせることもやりやすさに繋がったそうです。
生徒たちはファストファッションの問題に対して自分たちに何ができるかということを中心に,Unit 8で取り組んだフェアトレードの考え方も取り入れて取り組みました。語数の多い生徒は10分間に260 words程度の文章を書いたそうです。
オリジナリティにあふれたパフォーマンステスト―生徒たちがaccuracyを意識する
年5回以上,パフォーマンステストを行います。『FACTBOOK Ⅰ』で練習した「相槌・反応・質問」のスキルを使い,『Heartening I』の登場人物役とインタビュアーの役で3分間やりとりを続けるなど,湯浅先生のオリジナリティにあふれたテストで評価していきます。これらのテストで,「生徒が具体的に何ができるようになったのか」を評価するため,生徒たちのaccuracyの意識を高めていけるといいます。
授業の成果が外部試験の成績を上げた!
湯浅先生が受け持つ2年生は,入学時は英語が苦手な集団だったそうです。しかし,1年生冬のGTECで成績を伸ばし,2年生7月に受けた駿台ベネッセ模試でも高偏差値帯の人数が増加し,英語力が大きく高まっていることが証明されました。
生徒の声
入学時には「英語は入試科目だからやらないと仕方ない」「英語は嫌いだから言われないとやらない」とこぼしていた生徒たちでしたが,授業アンケートでは「授業が濃く,毎回自分が成長しているのを感じる」などと好評の声が多く聞かれました。中には,「大げさかもしれませんが,この授業を受けるためにこの高校に来たのだと思いました」と熱く語る生徒もいたとのことです。
湯浅先生の発表からは,まずfluencyを育て,そこからaccuracyも伸ばしていこう,という一貫した“fluency first”の姿勢がうかがえました。生徒のfluencyを育てることでスローガンである『英語は言語だから,使わないと意味ない!』の実践に繋がり,生徒の「もっと話したい,伝えたい!」とモチベーションが上がったことが,成績の上昇やアンケートのコメントに繋がったのだと思います。
今回の記事では,大阪府立四條畷高等学校の湯浅温子先生による『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の授業の応用例や授業に臨む姿勢などの実践例をご紹介しました。本サイトでは,今後も「論理・表現」の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例をご紹介していく予定です。最後までお読みいただき,ありがとうございました。
<桐原書店・英語編集部>
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