『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』授業実践例紹介 大阪府立北野高等学校 武田亮先生

教科書と生徒のポテンシャルを最大限に発揮できる授業

本稿では,「論理・表現」科目の授業をどう作っていけばよいかに焦点を当て,弊社教科書『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の全国の高校の先生方の活用事例をシリーズ連載でご報告します。前回は「協働学習+個別最適化できる授業デザインを目指す」指導の実践例を長崎県立西陵高等学校の長池美佐先生に伺いました。

第6回となる今回は,前回に引き続き,昨秋弊社主催で行われたウェビナーから「教科書と生徒のポテンシャルをいかに最大限に発揮できるか」について,大阪府立北野高等学校の実践例のご紹介です。

〇学校のご紹介
ご登壇いただいたのは,大阪府淀川区にある北野高等学校の武田亮(たけだりょう)先生。大阪府のトップ校として全国的な知名度を誇る学校です。「文武両道」を体現する指導方針を持ち,男子10km,女子7kmの距離を走る「断郊競走」や本物の縄を用いた縄跳び課題など,ハードな体育指導も同校の伝統の一つ。英語関連では,2019年度~2021年度の3年間は文部科学省主導のWWLコンソーシアム事業の拠点校であったこともあり,社会課題に対するケーススタディや発表活動を英語で実践する機会を多く設けている学校です。武田先生は昨年度,高校1年の担任をされながら,FACTBOOK教科書を用いた論理・表現Ⅰの授業運営を中心的に検討・実践されました。

論理・表現Ⅰ授業の概要
同校の授業は1時間あたり65分で構成されています。約1時間の授業のうち,前半の30分は文法学習にあて,後半の30分は学習した文法を使った言語活動にあてるような構成で授業が行われていました。
ウェビナーでは,前半の「文法指導」,後半の「言語活動」に分けて,それぞれの時間での取り組みを具体的に説明していただきました。

主体的・対話的で深い学びを促す文法指導
文法学習を行うメイン教材として,同校では,FACTBOOKに準拠したWorkbook(Mastery)を使用されていました。授業の具体的な手順としては以下の画像のような流れです。

(1) 予習:個人で問題演習→疑問点の確認
授業の前に,生徒は宿題としてWorkbookの設問に取り組んできます。解答は事前に配ってあり,答え合わせまでやっておくように指示します。その際に,ただ丸付けをして終わりではなく,間違えた箇所,理解しにくかった箇所などに関しては,できる限り自分で調べて,疑問点を明確にしたうえで授業に参加させます。生徒は,文法参考書FACTBOOKを読んだり,WorkbookのQRコードから視聴できる例文の解説動画を見たり,ネットで検索をしたり,さまざまな方法で調べて,授業に臨んできます。

(2) 授業:ペアでの学び合い
授業では,まずはペアになって,お互いに宿題をちゃんとやってきているかをチェックした後,相談しながら学び合う時間をとります。そこでお互いの考えを共有し,疑問が解決したところ,重要だと思ったことなどを最終的に教室内で共有します。このような活動を通して,「自分自身で調べて疑問を解決する力」を身につけることをねらいとしています。
生徒のペアワークの間,教員は机間を巡回しながら,「頑張ってるなぁ」とか「それ,めっちゃ大事な情報や! ありがとうな」など,生徒のモチベーションを維持させたり,有益な情報共有へと導いたりできるような声かけを行います。学んだことの共有を行う際のツールとしては,Google Classroomの「質問機能」を使い,後で見返すことができるように,文字としてまとめたカードを書かせ,それを共有させます。

この活動を通して,生徒の自律的な学習能力にもポジティブな変化が見られるようになった,と武田先生は言います。
武田先生「最初の頃は,生徒が学び合いで得た知識をまとめるのもそこまで上手ではありませんでした。目の付けどころがあまりよくなかったり,情報自体が間違っていたり,彼らの中にはさまざまな課題がありましたが,活動を何回もやっていると,それらがどんどんできるようになってきました。生徒たちが成長できた理由としては,クラス内のほかの生徒がまとめた内容を見て,『こういう風にまとめればいいんだ』とか『こういうところに目をつければいいのか』と,お互いのよい部分に触発されていったからだと思います。最終的には,教員のフォローがなくても生徒が自主的に学んでいける状況になりました。こういった協働学習は,最初はうまくいかなかったとしても,その後の動機づけやサポート次第では,うまくいくことが沢山あることを,教員の方が教えてもらいました。こちらが手助けしたくなるのをグッとこらえて,生徒のポテンシャルを信じてあげたことがよい結果につながりました。」

💡ここがスゴイ! by編集部
・予習での疑問出しから授業での共有,解決の段階に至るまで,学習の手順が生徒にとって非常に明確で,自主的に取り組みやすい流れになっているように感じました。ウェビナーでは,生徒のペアワークの様子を動画で共有していただきましたが,とても熱心に話し合い,各自でタブレットPCを使って情報をまとめている姿が印象的でした。
・生徒がまとめた文法知識を共有する活動を通して,知識の定着を促すだけでなく「目の付けどころ」や「情報の調べ方」といった学習能力自体を伸ばすことができるという点も,「思考・判断・表現」の育成が求められる現課程において,重要な授業の要素ではないかと感じました。

パフォーマンステストの実施とロールプレイの授業内での扱い方
ここまでは,授業前半の文法指導の流れをご紹介してきましたが,ここからは,授業後半に行われるロールプレイ活動について,パフォーマンステストの実施方法と合わせてご紹介します。

(1) 「暗記に依存しない!」―即興型パフォーマンステストの実施
論理・表現Ⅰの授業後半ではFACTBOOK教科書のSpeakコーナーを用いたロールプレイ活動を行っていたのですが,それはあくまで前期・後期に1回ずつ実施されるロールプレイのパフォーマンステスト(下図参照)の「練習の場」として位置づけられていました。

<昨年1年生のパフォーマンステスト実施例。ロールプレイのほか,ライティング,プレゼンテーション,リテリングのテストが実施された>

このパフォーマンステストのロールプレイの内容は,教員が完全オリジナルで作成していたとのこと。教科書内容に関連した場面や役割を新たに設定して,1回のパフォーマンステストにつき3種類ほどの独自のミッションを作成されました。
テストの手順としては,まずは1分間で状況文やミッションの内容を読んで把握させ,その後ペアでの実演を2分間で行わせる,という流れです。日本人教員とALTとで協力して評価を行い,1時間以内に1クラス全員のテストを終えられるようにしました。生徒は,自分たちがテストを行う以外の時間を使い,教室内で多読教材を読むなど,時間を有効に活用できるように指示していました。
このパフォーマンステストにおける重要なポイントは,「その場で初めて見るオリジナルのミッションでロールプレイを行う」ということです。こうすることで,暗記に依存しないような形で,生徒の即興的な英語力を評価することができます。もちろん,完全に教科書から離れた話題や設定にしてしまうと授業に取り組む意義が薄れてしまうため,あくまで教科書と関連した内容で設定し,普段の授業にしっかり取り組んでいればテストに対応できるよう工夫しました。
このような「教科書と異なるトピックを話す」というテストに関して,生徒にアンケートを行ったところ,肯定的な意見が圧倒的に多かったとのことです。具体的には「自分の実力がよくわかる」「力を伸ばすために授業をどう受けなくてはいけないのか,どういう英語学習をしなければいけないのか,自分でよく考えるようになった」などの声があったようです。

(2) 「練習は本番のように!」―ロールプレイの授業内での扱い方
前述のとおり,パフォーマンステストが活動の「本番」であるため,授業内のロールプレイはその「練習」として意識して取り組ませていました。ロールプレイの手順は以下の通りです。

1. ペア作り
英語の授業は特にペアワークが多いため,毎授業の最初に席替えを行っていました。いろいろなクラスメイトと協力して学ぶことで,英語力だけでなく社会性も養うことができます。生徒からも,「席替えのおかげで新しい友達ができた」とか「友人のいつもと違う一面が見られた」などの声が上がっていました。

2. Read a task and situation ⇒ 3. Remember key words
クラス全体でタスクとシチュエーション,そしてアイデアを考えるためのヒントとなる語彙や表現を確認します。

4. Role A/Bを決定 ⇒ 5. Read your mission (1 min.)
座席の列ごとにRole A, Bを指定して,その後,本番のパフォーマンステストと同じ形式で,1分間でミッションを確認させます。

6. Role Play 1回目 (2 min.) 
ここまでの流れで準備が整ったら,実際にロールプレイを行わせます。活動の時間は2分間です。ただし,年度開始当初は生徒も即興で長く話すことに慣れていませんでしたので,2分間という時間を使いきれないという課題があります。そのため,生徒たちの様子を観察し,スムーズな会話が落ち着きそうなタイミングを見計らって活動を止めて(ストップウォッチは教員にしか見られないようにしていました),それがたとえ2分間に満たない時間だったとしても「2分間も話せたよ! すごいなぁ!」と明るく声かけをして,まずはとにかく徐々に生徒に自信をつけさせることを優先して指導していました。

7. Role A/B 入れ替え+ mission (1 min.) ⇒ 8. Role Play 2回目 (2 min.) ⇒ 
9. Remember useful expressions ⇒ 10. Read model dialogue
1回目の活動が終わった後,Role A, Bの役割を入れ替えて,異なるパートナーと2回目のロールプレイを行わせます。その後,教科書に載っているUseful Expressionsを確認し,最終的にModel Dialogueを読み上げて授業終了という流れで構成していました。

以上が授業内のロールプレイの基本的な流れになりますが,この活動に生徒がスムーズかつ活発に参加できるようになるまで,ある工夫が必要だったと武田先生は言います。

武田先生「本校でも,年度当初からいきなり生徒がスムーズにロールプレイに入れたかというと,実は全然そうではありませんでした。クラスの中には,シャイな生徒や,自分から積極的に英語で発話をするのが得意ではない生徒もいます。そこで,生徒が活動に慣れるまで,いくつかの『補助輪』を設けました。例えば,教科書のUseful Expressionsを最初に覚えさせてから活動に取り組ませたり,ミッションを読んだ後に,同じRoleを担当する生徒どうしでミッションの内容や話したらよさそうなことを相談させたりしていました。何回も活動を重ねていく中で,徐々にこういった『補助輪』を外していって,だいたい夏休み前には,独力で活動を行えるようになるまで生徒は成長してくれました。このように,生徒の能力や状況に応じて,取り組ませる活動内容の順番を変えたり,ブレインストーミングを入れたりしてスモールステップ形式の活動を行うことで,生徒とFACTBOOK教科書が持つポテンシャルを最大限に発揮できるのではないかと思っています。」

💡ここがスゴイ! by編集部
・ウェビナーでは生徒どうしのロールプレイを録画した動画を視聴することができましたが,教科書をただ読み上げるだけでなく,お互いに顔を合わせて,言いたいことを考えながら楽しそうに話している様子が大変印象的でした。
・活動の「補助輪」として教科書の順番を入れ替えたり,Roleごとの相談活動を入れたりしていた点は,「活動に不慣れな生徒をどのように授業に参加させるか」という課題に対して非常に有益な方法であると感じました。ここでつまずきを少なくすることで,生徒の自信につながり,活動に慣れてきた年度後半ではその足場を外すことで,生徒に自由に話させる本当の即興活動を行うことができます。年間を通して,生徒の状況を見ながら活動の扱い方を変化させていくという考え方は,論理・表現の授業を運営する際には非常に重要であることを,この実践例から学ばせていただきました。

今回の記事では,大阪府立北野高等学校の武田亮先生の『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』授業の実践例をご紹介しました。本サイトでは,今後も論理・表現の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例をご紹介していきます。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

<桐原書店・英語編集部>


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