『FACTBOOK論理・表現Ⅰ』授業実践例紹介 西武学園文理高等学校 土屋進一先生・四十万俊幸先生

【英語】Small Stepで生徒の「伝えたい!」を引き出す 

本稿では,「論理・表現」科目の授業をどう作っていけばよいかに焦点を当て,弊社教科書『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の全国の高校の先生方の活用事例をシリーズ連載でご報告します。前回は探究的・対話的学びによって生徒の主体性を育む授業の実践例を長野県松本県ケ丘高等学校の羽賀先生に伺いました。

第3回となる今回は,前回に引き続き,昨秋弊社主催で行われたウェビナーから,Small Stepで生徒の「伝えたい!」を引き出す授業について,西武学園文理高等学校の実践例のご紹介です。


◯ 学校のご紹介
ご登壇いただいたのは,埼玉県狭山市にある西武学園文理高等学校の土屋進一(つちやしんいち)先生と四十万俊幸(しじまとしゆき)先生。こちらは私立の中高一貫校です。グローバル,グローバル選抜,先端サイエンスの3つのクラスで構成されており,生徒たちは,「すべてに誠をつくし最後までやり抜く強い意志を養う」という教育方針のもと,日々の学習に取り組んでいます。
本ウェビナーでは,同校に勤務され,英語教育に関する講演や記事の執筆の経験を豊富にお持ちの土屋先生・四十万先生のご両名に,土屋先生:Speak,四十万先生:Writeと2つのパートに分けて,教科書の使用例を紹介いただきました。

 論理・表現Ⅰ授業の概要
同校では,論理・表現Ⅰは週2単位で開講されています。
1時間で日本人教師によるGrammarの授業,もう1時間でALTとのTTによるSpeakとWriteの活動の授業が行われています。

 Speak授業の実践例(土屋先生)
ウェビナーの前半では,『FACTBOOKⅠ』Unit 6のSmall Talk, Listen, Speakの実践例を,実際の授業で使われている教授資料とともに説明いただきました。

授業の流れ
① Small Talk
(1) 生徒への模範として,日本人教師がALTとSmall Talkのトピックに関する会話を行う。
(2) 生徒を2名程度指名し,ALTと生徒で会話を行う。

② Listen / Listen Again
(1) 生徒に音声を聞かせ,教科書の空所補充問題を解かせる。
(2) ペアワークで,解答や聞き取れなかった点などを共有させる。
(3) ペアで確認した内容を踏まえ,答え合わせの前に再度同じ音声を聞き,改めて答えを考えさせる
(4) 空所補充問題の答え合わせを行う。
(5) 教科書の“Listen Again”のコーナーの活動として,表現にフォーカスして音声を聞かせ,ディクテーションと,そこで聞き取った語句の類義語を選ぶ問題を解かせる。
(6) ディクテーションの解答(空所に入る語)の確認と,類義語問題の答え合わせを行う。さらに,この二つの語の使われ方の違いや,どのくらいよく使われるかなどについて,ALTに解説を行ってもらう。
(7) スクリプトを見ながらもう一度同じ音声を聞かせる。スクリプトでは重要表現や文法事項を色文字などで強調して示しており,目で見て,耳で聞きながら,内容と表現を包括的に確認させる。

💡ここがスゴイ! by編集部
・Listen / Listen Againの一連の流れの中で,同じ音声を4回生徒に聞かせている(上記手順の下線部参照)点が特徴的です。一つひとつのListeningの活動の目的が明確に異なるため,スクリプトを多角的に捉え,より正確に深く聞き取るための活動が展開されています。
・ALTに似た意味の二つの語の使い分けを解説してもらうことで,生徒は単に「似た意味」として理解するのではなく,それぞれのニュアンスの違いを意識することができます。生徒のことば選びの幅を広げるために,教科書の活動に立脚しつつ,独自のアレンジが加えられていることが印象的でした。

③ Speakの活動の足場掛け(Scaffolding):See / Think / Wonder 
Small TalkとListenで導入を行った後,いよいよSpeakの活動に入りますが,生徒どうしにやり取りを行わせる前に,教科書にはない足場掛けの活動「See / Think / Wonder」が行われています。
これは,教科書のイラストを掲示し,そのイラストがどのように見えるか(See),どういうことをしていると思うか(Think),どんなことが疑問なのか(Wonder)という3つの観点で思考を整理させ,クラスで使用している電子掲示板サービス「Jamboard」を使って生徒間で共有させるという活動です。
この活動は,同校では昨年度の2学期から取り入れられましたが,これを行うことで,さまざまなメリットがあったようです。まずは,教科書のタスクの内容を十分に理解させることができるようになりました。また,この後に控えるSpeakの活動に際して,生徒の思考を整理しつつ活性化させることにより,1学期に比べてタスク活動をよりスムーズに行えるようになったという効果も見られたとのことです。

<教科書のイラスト>
<「Jamboard」上でSee, Think, Wonderに整理>

💡ここがスゴイ! by編集部
  ・「See / Think / Wonder」をSpeakの足場掛けとして導入している点が非常にユニークです。初めは何かに対する断片的な理解や思考であっても,クラスメイトと協働的に整理していくことによって,まとまった内容を伝えるためのアイデアとして生かせるこの方法は,多様な言語活動に応用できそうです。講演のテーマでもある生徒の「伝えたい!」という気持ちを高める工夫ではないかと感じました。


④ Speak
以下にUnit 6 Speak ①の活動の流れを示します。
(1) SituationとTaskの内容を確認させる。
(2) 活動のアイデアのベースになるチェックリストを記入させる。
(3) Start from the following line(会話を始めるための1文目)とKey words and expressions for thinking(会話で使える語彙)を確認させる。
(4) Model Dialogueのアニメーション動画を視聴させる。

<Model Dialogueのアニメーション動画>

(5) ペアを作り,実際に活動を行わせる。
(6) Useful Expressionsの確認と音読を行う。
(7) Model Dialogueの学習に移る。まずは,教授資料データにあるModel Dialogueの「チャンク訳つき音読プリント」を配布し,ALTをA,生徒全体をBと役割を振り分けて,それぞれの役になりきって,会話の音読を行う(Role Play)。次に役割を交代し,同じ会話のRole playを再度行う。

<Model Dialogueの「チャンク訳つき音読プリント」>

(8) 生徒どうしのペアワークで同様のRole playを,役割交代を含めて2回行わせる。
(9) ペアを変えて,もう一度やり取りを行わせる。その際に,(7)や(8)で使っていたプリントは裏返し,「プリントを見ずに話す」ことを指示する。話す内容はモデルをそのまま使っても自分の言葉で話してもよいと伝え,「Model Dialogueに頼らずに自力で話す」という覚悟を持たせたうえで話させる。
(10) ここまでの練習の成果を試す場として,生徒を数名指名し,ALTとのやり取りを行わせる。ALTには,Model Dialogueとは違う内容を話してもらい,即興でのやり取りの機会を設ける。

💡ここがスゴイ! by編集部
・生徒の状況に合わせて教科書の使い方をアレンジされている点が印象的です。教科書に記載の順番通りに指導を行うと活動の後にModel Dialogueを視聴させる流れになりますが,こちらについて土屋先生からは,「タスクの理解や全体の大まかなイメージを実際の活動の前に持ってもらうため,本校では活動の前に見せることにしています。」とご説明がありました。Model Dialogueを見せて内容面からの支援を予め行い,一定の安心感を与えた後で活動を行わせる……というように,活動についていきやすい流れで生徒を導かれています。

〇Write授業の実践例(四十万先生)
ここまではSpeakの活用事例をご紹介してきましたが,このような豊富な活動を通してトピックに関する考えを話し合った生徒たちにとって,どのようなWritingの活動が有効なのでしょうか。
ウェビナーの後半では,Writeの指導の実践例を,四十万先生にご説明いただきました。

・授業の概要
同校では,WriteとGrammarの指導には各Unitにつき合計2コマの時間が割り当てられています。
各コマ内での具体的な時間の使われ方は,おおよそ以下の通りです。
 1コマ目:Write / Write More (35 min.), Grammar (15 min.)
 2コマ目:Grammar (15 min.), Write More+(35 min.)
限られた時間内で効果的な学習ができるよう,オンライン学習サービスの「スタディサプリ」を使用し,ターゲットの文法事項については,授業の先に視聴するように指示しています。これによって,生徒はある程度文法を理解したうえで授業に臨めるようになったということです。

・Writing活動の中で行っていること,意識していること
SpeakからWriteへの連携
四十万先生が論理・表現の授業の中で大切にしているポイントは,「聞いたり読んだりした内容に対して,しっかりと思考して,相手に伝わるように,言えて,書けるところまで行き着く」という点です。教科書のSpeakのModel Dialogueの中には,英文だけでなく「相談」「説明」「助言」などの文の「機能」が示されています。生徒にはこの「機能」に注目させ,「それぞれの発言に必ず意味(意図)がある」ということを確認させ,その気づきを踏まえてWriteに移るということを実践されています。

生徒の「悩み」に応える授業
四十万先生からは学習者である生徒の現状を踏まえた指導についてもお話しいただきました。授業に際して生徒に行ったWritingに関するアンケートによって,以下のようなつまずきポイントが明らかになったようです。

このような課題を克服するために,Writingでもペアワークやグループワークを積極的に行い,クラスメイトとアイデアを共有することで,内容や表現方法に広がりを持たせることを意識されているようです。

💡ここがスゴイ! by編集部
・「SpeakとWriteをつなげる」というコンセプトで,Model Dialogueの一文ごとの機能に着目させた指導をされています。これにより,さまざまなパターンのストラテジーを蓄積させることができ,生徒が自分で文をつなげて産出する能力の発達に大きなプラスの効果があるように考えられます。
・指導の前に生徒の課題を確認し,それを解決するための方法として,ペアワークを実践し,生徒どうしで振り返りながら内容・表現を高め合っていく活動が行われています。

<画像は教科書のWrite紙面。教科書の中でも,各自が書いた内容についてクラスメイトと共有するための表が用意されています。>

・Writing指導における形成的評価の取り入れ 
「言える→書ける」というコンセプトでSpeakingからWriting活動を導入し,ペアワークなどで「アイデアの検討・整理」までを行ったら,いよいよ1回目のWriting活動を行います。教科書のWrite Moreのタスクを行い,まとまった内容を書かせます。生徒の作文を回収し,そのうちいくつかをサンプルとしてクラスで共有します。下の画像のように,「良い表現」,「もう一歩」,「ミスを直そう」という3つの評価で色分けした下線を付したフィードバック例を示すことで,生徒はクラスメイトが書いた作文からも学ぶことができます。

<Writingのフィードバック例>

1回目のWritingの際には,教員の評価だけでなく,生徒自身で自分がどこまでできたのかの振り返り評価を行わせているとのことです(Self-evaluation)。自分の評価と教員からの評価のギャップに気づかせ,「何が足りなかったのか」を確認してから2回目のWriting(Rewrite)を行っているそうです。

💡ここがスゴイ! by編集部
・2回のWritingの場面を設け,1回目と2回目の中間の段階で,フィードバックの共有や,自己評価・教員評価が行われることで,さまざまな観点から作文の反省点を知ることができるようになっています。クラスメイトのよいアイデアに触れたり,自分の表現の改善点を自覚したりすることは,2回目のWritingのモチベーションにつながることが期待できると感じました。


今回の記事では,西武学園文理高等学校の土屋進一先生・四十万俊幸先生の『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』授業の実践例をご紹介しました。本サイトでは,今後も「論理・表現」の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例をシリーズでご紹介します。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

<桐原書店・英語編集部>


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