『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』授業実践例紹介 順天中学校・高等学校 浅輪旬先生

タスク達成を通じて,「アウトプット力 + 文法力」を伸ばす

令和5年度に入り,高等学校新課程の2年目を迎えました。本稿では,「話すこと」と「書くこと」が中心の「論理・表現(以下,教科書名等以外は「論表」と略)」科目の授業をどう作っていけばよいかに焦点を当て,弊社教科書『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』の全国の高校の先生方の活用事例をシリーズ連載でご報告します。まずは,昨秋弊社主催で行われたウェビナーの内容から,「アウトプット力+文法力」を伸ばす授業について,順天中学校・高等学校の浅輪旬先生の実践例のご紹介です。

 学校のご紹介
ご登壇いただいたのは,東京都北区にある順天中学校・高等学校の浅輪旬(あさわしゅん)先生。創立180年もの歴史がある中高一貫校です。中等部は300名強,高等部は700名強,全校で1000名を超える生徒が在籍し,「英知をもって国際社会で活躍できる人間を育成する」という教育理念のもとに学び方と生き方を大切にするさまざまな教育活動に取り組んでいます。
浅輪先生は2021年より新課程の高校1年の英語(英コミⅠ・論表Ⅰ)の検討委員として,カリキュラム作成を行われていました。

◯ 高校1年の英語カリキュラムの概要
カリキュラム:英コミⅠ(4単位)/論表Ⅰ(2単位)
英コミⅠでは,教科書『Heartening Ⅰ』(桐原書店)を扱う3単位のほか,1単位でネイティブ教員による少人数授業が行われています。この少人数授業では,ライティングやプレゼンテーションの指導を主に行われているようです。
論表Ⅰでは,2単位の中で『FACTBOOKⅠ』教科書と共に,『FACTBOOK Workbook』と『総合英語 FACTBOOK』を併用されています。

◯ 論表Ⅰの目指すところ,そのために何を意識するか
浅輪先生によると,順天高校の論表Ⅰの指導で目指しているのは「タスク活動を通じて,アウトプット力+文法力を養成すること」です。この目的を達成するために,それぞれ以下のことを意識されて指導されているようです。
アウトプット力の養成
・「タスク達成のゴールを設定すること」
・「『まずはやってみる』という姿勢を育成すること」
文法力の養成
・「モデル文を通じて気づきを得ること」
・「『広く,浅く』を意識すること」

◯『FACTBOOK Ⅰ』教科書の使い方 ~やり取りの力を効果的に育成する「3つのコア活動」~
実際の教科書の扱い方としては,下の表のように,教科書内の多くの活動を行いつつも,課によって扱うコーナー/扱わないコーナーを選んでいるのが順天高校のご指導の特徴です。

Unitの各コーナーの中でも「話すこと(やり取り)」の活動をしっかりと行うため,SpeakとUseful Expressionsは全Unitの中で扱い,Speakの活動を行った後にPerformance Testを行う流れで指導が展開されています。

さらに順天高校のご指導で大きく特徴的なところは,Speakの活動に関して以下のように「3つのコア活動」を設定し,論表Ⅰの授業時間の中で「ペア活動」→「Performance Testの準備」→「Performance Testの実施」まで行っているということです。


【コア活動1】 Speak(2つ)-2コマ
まずは教科書のSpeak➀,Speak➁を1コマずつ(計2コマ)扱います。活動の前にPerformance Testの評価項目をシートで生徒に共有することがポイントです。これを行うことで,「どのような項目が評価されるか」,「タスク達成のためにどんなことが必要なのか」を生徒と共有してから活動に取り組ませることができます。また,評価項目には,「独自性」を盛り込んでおり,生徒が活動をモデル文の暗記→復唱で終わらせることなく,自分たち自身で考えた展開で教科書のタスクを達成できる方法を考えることができるように促しています。

Speakの授業の1時間の実際の流れは以下の通りです。
・冒頭で教科書の状況やタスク,Information Cardの確認の時間をとる。
・生徒にペアで1回目のSpeakの活動に取り組ませる。
・活動後に「ネタバレ」タイムとして,お互いがどんな設定だったのか,ペアでInformation Cardを見せ合いながら確認させる。
・Model DialogueとUseful Expressions(文法)の指導を行い,インプットを行う。
・2回目のSpeakの活動に向けて,1回目と同じペアで「作戦会議」の時間を設け,話す内容の方向性(どこまで自分たちなりの独自性を盛り込むか)を話し合わせる。
・2回目のSpeakの活動に取り組ませ,タスクの達成度の振り返りを行わせる。


【コア活動2】 Preparation Time-1コマ
この時間ではPerformance Testに向けた準備時間を生徒に与えます。
前の2コマで行ったSpeak➀,➁を2セットずつ,生徒同士で再度話し合わせ,共有された評価項目を達するために,使いたい表現を定めたり,話す内容を固めたり,場合によってはPerformance Testで時間が余ったときの対応を考えさせたりします。「作戦会議」の時間も十分に与え,生徒がその場でデジタル機器を使って調べ学習を行うことも許可しています。


【コア活動3】 Performance Test-1コマ
Unitのやり取りの活動の集大成として,この時間を使って,Performance Testを行います。
生徒を1組ずつ廊下に呼び,教師がその場でSpeak➀か➁のどちらかをランダムに選び,やり取りを生徒に行わせます。
教師は生徒のパフォーマンスを見て,Google formsで即座に評価を行います。
生徒は,自分たちがテストを行う以外の時間を使い,教室内で教科書の「Write」コーナーもしくは準拠の『Workbook』のどちらかの演習に取り組みます。(「Write」と『Workbook』のどちらに取り組むかは,事前に教師が指示を出しています。)

このような流れの授業を4月~9月までかけて行っていくと,生徒も次第に『FACTBOOK』を使った活動に慣れていったとのことです。また,これらの活動の成果として,モデル文の暗記ではなく,独自の展開でやり取りを行う生徒が増えてきたと言います。

💡ここがスゴイ! by編集部
・Speakのパフォーマンス力を高めるために,事前に評価項目の共有を行い,十分なPreparation Timeを与える取り組みがユニークです。このような工夫によって生徒間の協働的な学習が促され,また,生徒にとっても,自分で考え抜いた表現・内容をもとに,自信を持って話す活動に取り組めるようになるのではないかと感じました。
・評価項目に「独自性」を設けることで,生徒に独自の展開を考える楽しさを感じさせるように工夫されています。一方で,独自の展開を盛り込みつつタスクを達成するためには,活動の目的や場面をよく理解し,適切な範囲内で独自の要素を入れる必要があります。このような生徒自身で工夫・調整を積み重ねていく活動は「論理・表現」という科目においてますます求められているように感じました。
・Performance Testを授業で行う際に,待ち時間に生徒にWriteやWorkbookの演習を指示するという点も,テストの時間を有効に使いながら,英作文や文法の学習時間を確保できるため,活動と文法のバランスを取るうえでは実践的な方法だと感じました。

 活動と文法のバランスを取るカリキュラム調整
ここまで,9月までの「やり取り」中心の活動に慣れさせる授業例をご紹介してきましたが,順天高校では,昨年度の10月以降は,扱う文法項目(動名詞や分詞など)の難易度を考慮し,Speakの活動を少し減らし(例えば,Speak➀➁の片方のみを扱うなど),その分,文法指導の比重を少し増やしたということです。Model DialogueやUseful Expressionsといった「文脈の中で使われている文法」についての指導の時間を増やすなど,生徒の状況を見ながら,フレキシブルに活動と文法指導のバランスを取られていたようです。ただ,Speakの活動後にPerformance Testは必ず行っているということです。

💡ここがスゴイ! by編集部
・先生は「文法の扱いを増やすようにバランスを見直した」と仰っていましたが,それでも,4~9月が「やり取り:文法=9:1」ぐらいだったのが10月以降は「やり取り:文法=7:3」ぐらいになったということです。生徒の文法の学習ニーズに応えつつ,豊富なやり取りの時間も確保できるように工夫されています。
・ウェビナーの最後には「生徒も教員も論表1年生」,「論表Ⅰ指導の1年間は次年度の論表Ⅱにつなげるための準備時間であり,また,次年度,どのように新たに論表Ⅰを担当する教員に引き継ぐかというところも含めて,さまざまな方法で試行錯誤しています」というコメントが先生からありました。作り手である編集部としても,このような真摯なご姿勢に最大限寄り添うために,よりよい授業実践につなげられるための教科書・教材を今後も制作していかなくてはと感じました。

今回の記事では,順天中学校・高等学校の浅輪旬先生の『FACTBOOK 論理・表現Ⅰ』授業の実践例をご紹介しました。本サイトでは,今後も「論理・表現」の授業にさまざまなアプローチで取り組んでいらっしゃる先生方の事例をシリーズでご紹介します。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

<桐原書店・英語編集部>


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