探求 古典探究 付属教材・資料見本
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単元の包括的なねらいと位置づけ、学習する教材の構成と特徴を示しました。ご授業に当たっての基本方針を立てる際などにご覧ください。単元のねらい単元の構成単元のねらい・習単者元自の身の構内成面の涵養に努めることにある︒指導者も学習者とと本単元では︑平安文学を代表する「源氏物語」を取り上げた︒学習者はすでに第一単元では説話を︑第三単元では︑作り物語の「竹取物語」と歌物語の「伊勢物語」「大和物語」を︑また第五単元では︑歴史物語の「大鏡」と軍記の「平家物語」をと︑さまざまな分野の物語を読んできた︒それらの作品を通して︑ストーリーのおもしろさを捉えるとともに︑登場人物の心情を読み取り︑その中で物語を読むことの楽しさを感じ取ったことであろう︒それによって︑古典の作品といえども︑決してその時代だけのものではなく︑それらの作品が普遍性を持ち︑現代でも十分に意味を有するものであることを理解したはずである︒ 「源氏物語」を読む基本的な姿勢はこれと変わることはない︒つまり︑ここまで読み進めてきた古典文学における「物語」の理解をより深めるとともに︑日本の古典文学の白眉ともいうべき「源氏物語」を通して︑さらなる読解力・鑑賞力を養うことが本単元の目標である︒ただ「源氏物語」は︑その長さとともに表現のうえで難解なと       1目標はあくまでも︑学習者が「源氏物語」の中で繰り広げられてころもあり︑語彙面や文法面などで読解に困難を感じる生徒が出てくることは否めない︒また背景や有職故実の知識も必要である︒もちろん︑それらの事項を理解するように指導することも重要であり︑そのことなくしては本文を原文のままで読むことは難しい︒しかしそちらの指導に偏ることは避けるようにしたい︒ここでのいるさまざまな人間ドラマに触れること︑また︑それによって学もに物語世界を楽しむ姿勢を持っていたい︒長編「源氏物語」五十四帖の中から本単元で取り上げたのは︑「桐壺」︵二場面︶「若紫」︵一場面︶からの計三場面である︒高校段階で「源氏物語」全編を読破するのは至難の業であるが︑物語全体に興味を持たせるには冒頭部分を欠かすわけにはいかない︒桐壺帝の︑更衣という立場の女性への異常ともいえるほどの激しい愛︑そこから光源氏が誕生したことの意味︑更衣の苦悩とやがて訪れる死︑また次の場面では︑母に生き写しだという藤壺の桐壺帝への入内︑亡母への甘えも混じった源氏の藤壺への慕情︑すべてがそれ以後の源氏を動かし︑「源氏物語」という長大な物語を動かしていくきわめて重要な問題である︒音読を含め丁寧に読み進め︑まずは学習者が「源氏物語」への興味・関心を持てるように指導したい︒続く︑「若紫」の巻からは︑「若紫との出会い」の場面を取り上げた︒瘧病の加持祈禱のために北山を訪れた光源氏と︑後に正夫人格として深い愛情を受け︑生涯添い遂げることになる紫上との出会いの場面である︒源氏は初々しい少女を垣間見てときめき︑自分と同様の境遇であることを知って捨て置けない気持ちになり︑また︑そこに自らが恋い慕う義母藤壺宮の面影を認めて苦悩を深める︒源氏にとって重要な問題はすべてここに凝縮しており︑「源氏物語」の中で最も人口に膾炙している場面でもある︒ぜひともその情景や心理が十分につかめるように指導をしたい︒このようにいずれも「源氏物語」の理解には欠かすことのできない場面である︒ここでの学習を起点として︑Ⅱ部第四単元「物語」︑さらには「源氏物語」全体へ︑またほかの物語作品︑さらには「源氏物語」に対する古典評論などへと指導を進めたい︒源氏物語物語

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