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1出典解説…教材ごとに筆者(作者)や出典に関する詳しい解説を掲げました。教材の作者および出典についての解説、作品の構成や内容などを掲載しました。教材の背景を確認することで、学習の導入などにお役立ていただけます。●■大和物語■作者と成立構成・内容1 出典解説大和物語(姨捨)   書 名 ●物語と日記書名・作者と成立・構成・内容なぜ「大和物語」という名称になったかについての定説はない︒「大和物語」という書名を最も早く記載しているのは︑「伊勢物語知ち顕げん抄」︵源経つね信のぶ作と伝わるが後人の作とされる︶であり︑ここでは︑「やまとしまね」︵日本国︶のことを書いているので「大和物語」であるとしている︒「大和」には︑大和の国のことを書いたもの︑伊勢物語に対して名づけられた︑女房大和の作によるもの︑大和歌による古事︑といった説があるが︑決定的なものはない︒比較的有力なのは︑成立した平安初期が︑漢詩文の隆盛した時代であり︑唐に対しての大和︑つまり日本国のことを書いたというものである︒ただし︑作者自身が命名したということはない︒平安後期の藤原清輔「袋草紙」に「作者不審」とすでにあり︑それ以降︑女房大和説︑伊勢説などさまざまな作者説があるが︑決着は見ていない︒現在では︑敦あつ慶よし親王や源宗むね于ゆきなど宇多天皇周辺の人物が多く登場することから︑天皇周辺の人物説や︑清原元輔・源順ら梨壺の五人の中に作者がいるとする説などがある︒ただし︑作品そのものが前半︑後半で内容を異にしていることから︑複数の作者による作であろうと考えられている︒成立年代も確定していない︒現在比較的有力なのは︑登場人物の官名から判断して九五一︵天暦5︶年あたりとするものである︒それが一条朝頃までに増補されたと考えられている︒作品後半部は古伝承を多く含む内容から︑成立年代を確定するのがさらに難しくなっているが︑前半部とさほど大きな時代のずれはないようである︒全体は一七三段に分けられ︑宇多天皇を中心とする人々を描く前半部︵一四六段まで︒一説に一四〇段まで︶と︑古伝承にまつわる説話的・伝説的な内容を持つ後半部とで構成されている︒前半では︑出世がままならずに悩む歌人の姿や︑叶わぬ恋をめぐる人間模様など︑さまざまな人物像が実名をもって描かれている︒一方︑後半は︑無名の人々が織り成す愛憎模様が中心教科書(四五〜四七)に据えられている︒作者の視点は︑どちらかといえば世俗的関心に基づくものと考えてよいだろう︒また︑いずれも歌が物語の展開上重要な意味を持っているので︑歌物語の範疇と考えられるが︑後半は説話的要素が強く︑後の説話文学︵「今昔物語集」など︶へつながる要素も含んでいる︒25

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