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発展問題発展問題1■ランドセル■】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。(配点私はふと思い立って、大切にしているぬいぐるみのルルをランドのセル三につ押のし形込ん式ででみごた。用入意っしたて。しいかまもす、ま。だまだaヨユウがある。気に入りの絵本を入れてみた。幼稚園で使っていた色bエンピツを入れてみた。台所に走っていって、漫画の絵の付いたcスイトウを持ってきて入れてみた。何だって入った。石ころ。チョコレート。ひみつのアッコちゃんのコンパクト。スヌーピーのハンカチ。ドロップ。入る、入る。来年はもう無理ねと母が言っていた水着。見当たらないと絶望がいや増す水玉の靴下。「あらやあだ、家出用のかばんじゃないのよ、それは。」ランドセルに身の回りの物を全部突っ込もうとしている私に気がついて、母は声を上げて笑った。そんなことわかってる。小学校は、どんな所だか知らないけれど、石ころやルルを持っていくような所じゃないってことくらい、わかってる。でもね、でもお母さん。①何か大丈夫な気がしてきた。だってこのかばん、何だって入っちゃうんだもん。小学校が絶望的な場所だったら、そこでまたもや自分に絶望したら、私はこのランドセルに気に入りの物を全部詰めて、それでそこから逃げていこう。ハンカチやスイトウの飛び出た赤いランドセルを見下ろして、私はそうひらめいたのだった。どこか、絶望しないでいられる場所を探して、たった一人、全財産を持って、逃げよう。そうだそうだ、そうしよう。もう大丈夫。私の全財産は、ルルでありハンカチでありスイトウであり、チョコでありキャラメルでありキャンディーであり、石ころであり家族で撮った写真であり、触るとガチョウが金になる絵本だった。それだけで生き延びられると私は思っていた。一人で、どこかで、大人になるまで生きていけると。全財産を押し込んだランドセルにふたをして(かちゃりとまた留め金が鳴った)、両腕を肩バンドに差し入れて背負い、立ち上がった。背負った全財産はあまりにも重く、私はよろよろと後ろによろけた。それを見て母がまた笑った。その夜、父が帰ってくると、母はまた私にランドセルを背負わせて、父とともに笑った。カメラを向けたりもした。自分が笑われているのに私はなぜか怒りも泣きもしないで、何だかおんなじように愉快な気持ちになって、わざとよろよろしてみせて、それで②一緒に笑った。おばあちゃんに電話をかけてお礼を言うときも、私はずっと笑っていた。③その四月に私は小学生になった。「ランドセルに背負われてる。」と母に笑われながら、毎日、赤いランドセルを背負って小学校を目指した。ひょっとしたら赤いランドセルは、もしくは奇妙な匂いのする四角い空洞は、④私にとって扉だったのかもしれない。なぜなら私はかつてのように絶望しなくなったから。おはようと言われればおはようと返せばいい。おかしいことがあったら声を出して笑えばいい。教材に関する発展的なレベルの設問例をご用意いたしました。データは〈一太郎・ワード・PDF〉5050点)【

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