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標準問題標準問題1■ランドセル■】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。(配点子どもというのはどのくらい大人なんだろう。何にもわかってなさのそ三うつなの顔を形し式てでいごるが用、意ししかてし、いいまろすん。なことをわかっているものだ。ともあれ、①私はちゃんとわかっていた。幼稚園児のとき、私は本当に何にもできない子どもで、字も読めなけりゃはさみも使えない。何か話しかけられてもすぐに答えられないし、どこかが痛くても痛いとも言えない。おしっこという一言が言えなくて、結果、aガマンできずにいつもおもらし。廊下のb隅で、替え用のパンツに着替えさせてもらう。ぬれたパンツはビニール袋に入れられて、持って帰るよう渡される。ほかの子ができることを自分はなぜかできない、ということを私はわかっていた。話しかけても黙っているから、話しかけた子が困っているのが、もう二度と話しかけてくれないのが、わかっていた。ちょっと困った子だと、先生が思っていることをわかっていた。替え用パンツはほとんど自分専用だということもわかっていたし、ビニール袋に詰められたぬれパンツの情けなさもわかっていた。全部わかっているから、私は絶望した。幼稚園児の絶望なんてたいしたことないと思うかもしれないが、世界がcセマいぶん、絶望の色合いはうんと濃いのだ。だってそこしかいる所がないんだから。私って、②きっとずっとこんな感じなんだろうなあ、と、大人語にdヘンカンすればそんなようなことを、私は漠然と思っていた。誰ともうまく話せなくて、だから友達もできなくて、みんなのできることはずっとできないで、何だか格好悪くて、先生や親を困らせて、楽しいと思うようなことがあんまりない。そういう場所で、こういう具合に私はずっと生きていくんだろうなあ。嫌だけど、ほかにどうしようもないもんなあ。幼稚園児の私は大人語をまだ持っていなかったので、ただぼんやりと重暗い、eキュウクツな気分だけを抱いていた。ここを出ていったって世界はさほど変わらんだろうとわかっていたから、卒園式も、晴れがましい気分ではなかった。いつもよりきれいな服を着せられ、列の後ろについて、みんなが動けば遅れないように(でも遅れるが)動き、いつもとはまるで違う一日を、③何とかやりすごした。まだ空気の冷たい春の初め、もはや幼稚園児でもなく、まだ小学生でもない私のもとに、いろんな物が続々とやってきた。学習机、真新しい体操服、運動靴、お道具箱、教科書、ノート、筆箱、鉛筆。そのすべてに母は名前を書いたり縫い付けたりした。小学生というものは、何とまあ所有物が多いんだろうと感心した。これ全部私の物になるんだと、子ども部屋に散らばった、真新しいそれぞれを見て私は思った。やっぱり晴れがましい気分にはなれず、④どちらかというと気が重かった。教材に関する標準的なレベルの設問例をご用意いたしました。データは〈一太郎・ワード・PDF〉4850点)【

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