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〈Ⅱ〉「山月記」隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、次いで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところすこぶる厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交わりを絶って、④ひたすら詩作にふけった。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に残そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚がらず、生活は日を追うて苦しくなる。李徴はようやく焦燥に駆られてきた。この頃からその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみいたずらに炯々として、かつて進士に登第した頃の豊頰の美少年の面影は、どこに求めようもない。数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のためについに節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。かつての同輩はすでにはるか高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にも掛けなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の俊才李徴の自尊心をいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼は怏々として楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑えがたくなった。一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿ったとき、ついに発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から起き上がると、何か訳のわからぬことを叫びつつそのまま下に飛び降りて、闇の中へ駆け出した。彼は二度と戻ってこなかった。付近の山野を捜索しても、何の手がかりもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった。問一二重傍線部a~eの読みをひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。知知・・技技問二波線部A「生」に該当する語を、Ⅰの本文中から漢字二字で抜き出せ。読読むむ問三波線部B「声」、C「逆旅」とは何か。それぞれ漢字二字で答えよ。知知・・技技問四傍線部①「登進士第」を「山月記」ではどう表現しているか。該当する箇所をⅡの本文中から抜き出せ(句読点は不要)。読読むむ問五傍線部②「不能屈跡卑僚。」について、書き下し文にせよ。知知・・技技この部分に該当する箇所を、Ⅱの本文中から抜き出せ(句読点は不要)。読読むむ問六傍線部③「乃与哀君等亜為握伍耶。」を現代語訳せよ。読読むむ問七「山月記」では傍線部④「ひたすら詩作にふけった」とあるが、「人虎伝」ではどうであったか。簡潔に答えよ。読読むむ問八「発狂」後の李徴の行為で「人虎伝」にだけ見られることは何か、十字以内(句読点を含む)で答えよ。読読むむ39評価の観点 設問ごとにどの観点で評価を行うかを示すアイコンを示しました。(2)(1)

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