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発展問題いや、そんなことはどうでもいい。おれの中の人間の心がすっかり消えてしまえば、おそらく、その方〕、知らぬ間に自分は左右の手で地をつかんで走っていた。何か身体中に力が、、、、、おれが人間だったeキオクのなくなることを。この気持ちは誰にも〕、そのとき、目の前を一匹DBCA【〕、獣でも人間■山月記■発展問題1】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。(配点今から一年ほど前、自分が旅に出て汝水のほとりに泊まった夜のこのと三、つ一の睡し形て式かでらご、ふ用と意目しをて覚まいすまとす、。戸外で誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出てみると、声は闇の中からしきりに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走りだした。aムガムチュウで駆けていくうちに、いつしか道は山林に入り、〔満ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えていった。気がつくと、手先や肘の辺りに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川にbノゾんで姿を映してみると、すでに虎となっていた。自分は初め目を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかったとき、自分は茫然とした。そうして恐れた。まったく、どんなことでも起こりうるのだと思うて、深く恐れた。しかし、なぜこんなことになったのだろう。①わからぬ。まったく何事も我々にはわからぬ。理由もわからずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由もわからずに生きていくのが、我々生き物のさだめだ。自分はすぐに死を思うた。〔のうさぎが駆け過ぎるのを見たとたんに、②自分の中の人間はたちまち姿を消した。再び自分の中の人、間、が目を覚ましたとき、自分の口はうさぎの血にまみれ、辺りにはうさぎの毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。ただ、一日のうちに必ず数時間は、人間の心が還ってくる。そういうときには、かつての日と同じく、人語もcアヤツれれば、複雑な思考にも堪えうるし、経書の章句をそらんずることもできる。その人間の心で、虎としての己の残虐な行いの跡を見、己の運命を振り返るときが、最も情けなく、恐ろしく、憤ろしい。しかし、その、人間に還る数時間も、日を経るに従ってしだいに短くなっていく。今までは、どうして虎などになったかと怪しんでいたのに、この間ひょいと気がついてみたら、おれはどうして以前、人間だったのかと考えていた。③これは恐ろしいことだ。いま少したてば、おれの中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり埋もれて消えてしまうだろう。〔〕、④古い宮殿の礎がしだいに土砂に埋没するように。そうすれば、しまいにおれは自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂い回り、今日のように道で君と出会っても故人と認めることなく、君を裂き食ろうて何のdクいも感じないだろう。〔でも、もとは何かほかのものだったんだろう。初めはそれを覚えているが、しだいに忘れてしまい、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか?、、、、が、⑤おれはしあわせになれるだろう。だのに、おれの中の人間は、そのことを、⑥この上なく恐ろしく感じているのだ。ああ、まったく、どんなに、恐ろしく、悲しく、切なく思っているだろう!教材に関する発展的なレベルの設問例をご用意いたしました。データは〈一太郎・ワード・PDF〉3050点)

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