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墳■■に次■■り忽ち疾■■■に嬰■■りて発狂し、夜戸外に吾が名を呼捷■つ。睽■■間■■言笑時を歴■ること頗■■■る久し。傾風結想、渇展■べんと。乃ち再拝す。虎曰く我れ足下と別れてより ■■■■ ■りて此に至れる。且つ傪始め君と場屋を同■■■うすること十余年、情好歓すること甚しく、他友に■■■れり。意■■はざりき吾れ先づ仕路に登らんとは、君亦継いで科選にして飲を待つが如し。幸に出でて使するに因■り此に君に遇ふを得たり。而るに乃ち自ら草中に匿■■るるは、豈故人疇■■■昔の意ならんやと。虎曰く吾れ已に異■■■類となる。使君吾が形を見れば、則ち且に畏怖して之を悪■■まん。何ぞ疇■■■昔を之れ念■■ふに仮■■■あらんや。然りと■雖■■■君遽■■■に去るなく、少しく款■■曲■■を尽すを得ば乃ち我の幸なりと。傪曰く、我れ素■と兄を以て故人に事■■ふ。願くは拝礼を音容曠■■■阻■すること且つ久し。僕夫恙■■なきを得たるか、官途淹■■留■■を致さざるか。今又何■■にか適■く。向■■■者君二吏あり、駆りて進み、駅隷印囊を■■たり。庸■■ぞ御史となりて出で使するにあらざらんやと。傪曰く、近■■者■■幸に御史の列に備るを得、今使を嶺南に奉ずと。虎曰く吾子文学を以て身を立て、位朝序に登る、盛なりと謂ふべし。況んや憲台は清■■峻■■■百揆■を分糾す。聖明慎んで択び、尤■■■も人に異なり。心に故人の此地■■に居るを喜ぶ。甚だ賀すべしと。傪曰く往■■■者吾れ執事と同年に名を成し、交契深密なること常■■■友■■に異れり。声容間■■■阻りてより去■■日■■流るるが如し。風儀を想望して心目俱■■に断ゆ。意■■はざりき今日君が旧■■■を念■■ふの言を獲んとは。然■■りと雖も執事何■■為■れぞ我を見ずして自ら草木の中に匿■■るる。故人の分、豈是■■の如くなるべけんやと。虎曰く我れ今人たらず、安■■■んぞ君を見るを得んやと。傪曰く願くは其事を■■詳■■■にせんと。虎曰く我が前身呉楚に客■■たり。去歳方■■に還■■る。道汝■■■へて以て導くを見良■■久し。然れども尚ほ生物を攫みて食ふに忍びず。既契■■素より厚し。君は今日天憲を執り親友に■輝■■■す。而も俛■して地に泣くも、身毀■■れて用ひられず。是れ果して命■■なるかと。因つて呼吟咨■嗟■し殆ど自ら勝■へず。遂にぶ者あるを聞く。遂に声に応じて出で山■■谷■■るの間資を料走りを、掲んげやま。願しくたは。此を反さんと。傪曰く食■■■籃■■中に羊肉数覚えず左右の手を以て地を攫■■みて歩す。是れより心■■■■■狠■■、力■倍■せるを覚ゆ。其肱■■髀■■を視るに及びては則ち毛の生ぜるあり。心甚だ之を異とす。既にして渓■■に臨みて影を照らせば已に虎と成れり。非慟することに久しく飢ゑて忍ぶべからず。遂に山中の鹿■■豕■獐■■■■■を取りて食に充■つ。又久しくして諸獣皆遠く避けて得る所なし。飢益々甚し。一日婦人あり山下より過ぐ。時正に飢迫る。■徊すること数四、自ら禁ずる能はず。遂に取りて食ふ。殊に甘美なるを覚ゆ。今其首■■飾■■尚ほ巌石の下■■に在り。是れより冕■■して乗る者、徒して行く者、負ひて趨■■る者、翼ありて翔ける者、毳■ありて馳■する者を見れば、力の及ぶ所■悉■■■く擒■■へて之を阻し、立ちどころに尽す。率■■■ね以て常となす。妻■■孥■を念■■ひ朋友を思はざるにあらざれども、ただ■行■■■の神■■■■に負■■けるを以て、一旦化して異獣となり、人に靦■づるあり。故に分として見■■えず。嗟■乎■我れと君とは同年に登第し、交■■我は身を林■■藪■■に匿■■し永く人■■寰■■を謝■る。躍りて天を呼び泣く。傪且つ問ひて曰く、君今既に異■■■類となる、何ぞ尚ほ能く人■■言■■するやと。虎曰く、我れ今形変じて心悟■むるのみ。此地に居りてより歳月の多少を知らず、ただ草木の栄枯を見るのみ。近日絶えて過客なく、久しく飢ゑて堪へ難し。不幸にして故人に唐突し、慚■■惶■すること殊に甚しと。傪曰く、君久しく飢うれば某■■に余馬一疋あり、留めて以て■■贈■■■となさば如何と。虎曰く吾が故人の俊■■乗■■を食■■ふは、何ぞ吾が故人を■傷■■■るに異ら教科書(四六〜五八)藁■■ありと雖当に■尽■■■く散落すべし。君我が為に伝録せば、■■斤あり、留めて以て贈となさば可ならんかと。曰く吾れ方■■に故人と旧■■■を道■ふ。未だ食ふに暇あらず。君去るとき則ち之を留めよと。又曰く、我れ君と真に忘形の友なり、而して我れ将に託する所あらんとす、可ならんかと。傪曰く平■■■昔の故■人■なり、安■■■んぞ不可なるあらんや。恨むらくは未だ何■■如■■事なるかを知らず、願くは■尽■■■く之を教へよと。虎曰く君我に許さずんば我れ何ぞ敢て言はん、君既に我に許せり、豈隠すあらんや、初め我れ逆■■■旅の中に於て疾■■■の為に発狂し、既に荒山に入る。而して僕者我が乗馬衣■囊■■を駆り■悉■■■く逃げ去る。吾が妻■■孥■尚ほ虢略に在り。豈我が化して異■■■類となれるを知らんや。君南より回■■らば為に書を齎■■■して吾が妻子を訪ひ、ただ云へ、我れ已に死せりと。今■■日■■の事を言ふなかれ。之を志■■せと。乃ち曰く、吾れ人世に於て且つ資業なし。子あるも尚ほ稚■■し。固■■より自ら謀り難し。君の位周■■行■■に列■■■り、素より風義を秉■る。昔日の分、豈他人能く右■■らんや。必ず望む、其孤弱を念■■ひ、時に之を賑■■䘏■■し、道途に殍■■死■■せしむるなくんば、亦恩の大なるものなりと。言ひ已■■りて又悲泣す。傪も亦泣いて曰く、傪と足下と休■■戚■■同じ。然らば則ち足下の子は亦傪の子なり。当■■に力■■めて厚■■■命に副■ふべし。又何ぞ其の至らざるを虞■■れんやと。虎曰く我れ旧文数十■あり。未だ代■に行はれず。遺■誠に文人の口■■■閾に列する能はざるも、然も亦子孫に伝ふるを貴ぶなりと。傪即ち僕を呼び筆を命じ、其口に随つて書せしむ。二十章に近し。文甚だ高く、理甚だ遠し。閲■■して■ずること再三に至る。虎曰く此れ吾が平生の業なり。又安■■んぞ寝■めて伝へざるを得んやと。参考資料山月記小説Ⅰ小説Ⅰ小説Ⅱ教材のテーマや、作者・出典の理解につなが25

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