探求 文学国語 付属教材・資料見本
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に後退させる考え方ばかりして、ついに第一流の詩人になることを実現できなかった生き方、を意味することになる。◆◆◆①■残月の光を頼りに林中の草地を通って■(四七・10)②■此夕渓山対明月(此の夕べ渓山明月に対し)■(五三・11)③■時に、残月、光冷ややかに、白露は地にしげく■(五三・13)④■おれは昨夕も、あそこで月に向かってほえた■(五五・11)⑤■山も木も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮っているとしか考えない■(五五・12)⑥■虎は、すでに白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと■(五七・11)・①→⑥との関連で、■月■は、時間の経 過を示している。・②④⑤⑥の■月■は、李徴の孤独を強調している。特に⑤では、自然界までもが自分を理解してくれない。頼れるもの、すがるものは何もない、と、大 自然に対して自分の卑小さを嘆き、絶望している。・③は月の■冷ややか■な光が地に満ちている情景を描いており、作品に神秘性を加えている。月に向かってほえ叫ぶばかりの虎は、どうあがいても、その芸術の世界に到達できない李徴の嘆きや苦しみを象徴的に表現していると言える。さらにまたその姿は、一つの美(孤高    らは判然としないが)なっているというの美)を成しているとも言える。李徴が ■猛獣■とは、李徴の場合は■尊大な羞人間であったときには、求めても得られなかった美(芸術)に、虎となった今、自分自身が(意識してか無意識かは本文か皮肉を読み取ることもできよう。漢文訓読調のこの教材では、特に音読を大切にし、独特のリズムと文体の格調高さを味わわせたい。そのため、あらかじめ読めない語句や意味のわからない語句を調べておくよう指示したい。授業をスタートするにあたり、教師◆◆◆教科書(四六〜五八)(あるいはCDなど)による範読を行い、■自己の内なる猛獣■について表現する機各自の読めなかった漢字をチェックさせ、会を持つのも有意義であろう。その上で、全文を指名音読させるとよい。◆◆◆恥心■と「顧は■人み何臆間てか病は、、な誰自考自で分え尊ものて心猛中み■獣のよで活動 ねらい・準備物・手使「うあい猛。順・評価規準などを詳しくりで獣読、■示しました。あ」とり詩、作■という形をとって表れた。ほかの人 には、それが■名誉■であったり■地位■や■学歴■、■美貌■■金銭■■ブランド商品■などとさまざまな形をとって表れる。 自分自身でも、そんなものにこだわること自体を、無意味とわかりつつ、その呪縛からなかなか脱出できずに、気がつけば抜き差しならない状況にまで自分の生 き方を追い詰めていることがある。また、これといった理由もなく始まる■いじめ■や、学校に来ると■もう一人の自分■を、ステップ2知らず知らず演じてしまうことなども、  ■山月記■の作者中島敦が用いている翻生徒にとっては身近で日常的なこととして受けとめられるだろう。できれば、これらについての討議を試みてみたいし、それが無理のようなら、課題作文の形で、 素材の読み取りを通じて、自らが翻案によって表現したいことを明確にする。文体や表現を工夫しながら、独創性のある翻訳作品を作り上げる。この活動は、次の1〜3のステップに沿って、段階的に取り組むことを想定している。 小中学校や■言語文化■の授業で読んだ古典作品の中から、翻案してみたい作品を一つ選ぶ。案の手法について、原作との対比を通じて考えを深める。 2を踏まえたうえで、1で選んだ古典本文中から「月」に関する表現を抜き出し、それらが作品の内 容とどのように関わっているか、詩業に対する強い執着心を持ちながら、説明してみよう。読解答解説この作品を音読し、漢語的リズムを味わってみよう。知・主指導への手がかり山月記その猛獣に当たるのが、各人の性情だという。」(五四・12)とあるが、それぞれ自分の場合を指導への手がかり今まで読んできた古典作品の中から一つを選び、作者が「山月記」に用いた翻案の手法を参考にしながら、現代の作品として書き直してみよう。ねらい  ▼書く①題材の設定②表現の工夫 「活動のプロセス2」との関わりステップ1 ステップ3小説Ⅰ小説Ⅰ小説Ⅱ■■ ■表現 6■■ ■読解 5■■ ■発展 7活動15

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