探求 古典探究 ダイジェスト版
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  古典世界ビュー|⑤垣か間ま見み海を越える『源氏物語』古典常識・背景知識の習得垣間見とは、垣根、塀や障子(今の「ふすま」や「ついたて」)など、「隔て」とする物の隙間から、中をのぞき見る行為です。平安時代の貴族女性は顔を見られることを恥としていたため、通常は見ることができない女性を、男性が垣間見して恋に落ちるという展開は、『伊勢物語』の「初ういこ冠うぶり」(三六ページ)に見られるように、物語の重要なモチーフとなりました。「若紫」の巻のこの場面は、「初冠」の段を踏まえたといわれています。ただ光源氏が垣間見たのは、恋の対象とならないはずの尼君(男女関係を含めて俗世を捨てた人)と少女でした。しかし、この少女が、光源氏が思慕する藤壺宮に似ていて、光源氏は心を強く動かされます。この後、主要なヒロインとなる紫の上はこうして物語に初めて登場しました。コラム2『源氏物語』が世界中でさまざまな外国語に翻訳されているのを知っていますか。全訳、部分訳といろいろな場合がありますが、英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・中国語からスペイン語・フィンランド語などまで、伊勢物語「初冠」とがわかります。いくつか原文のニュアンスとはやや異なる点はありますが、英訳の方が、敬語もなく、主語と述語が明確に示されている分だけ、理解しやすいという印象を持った人もいるかもしれません。伊勢物語絵巻(住す吉よ如じ慶け筆) い みしょい 「初冠」での垣間見▼三六ページ物語112古典世界ビュー本文を読解するのに役に立つ以下のテーマを理解することで、学習者にとって、古文世界をより身近に感じられるようになります。【①末世と災害】【③平安朝の女性と漢文】【④不本意な出家】【⑤垣間見】【⑥小倉百人一首】【⑦待つ女】また、以下のテーマにはさらに詳しい解説を設けました。【②詠み人知らず】作品から見えてくる当時の世界観を授業で体感できます。教科書111ページ30111 源氏物語

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