探求 古典探究 ダイジェスト版
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作者・紫式部本名、生没年ともに未詳。藤原宣の孝たと結婚し一女をもうけたが、夫と死別。その後、藤原道み長なの娘、彰子のもとに出仕し、「源氏物語」を執筆したと見られる。宮中での呼称は族)の姓の「藤」に、「式部」は為時の官職名に由来する。「紫」は、「源氏物語」の異称「紫のゆかり」、あるいは登場人物、紫上うにちなんで称されるようになったといわれる。彰子の御み子こ出産の記録と自己の思いをつづった「紫式部日記」(➡一七九ページ)の作者。「源氏物語」以前と以後「源氏物語」は、「竹た取と物語」「伊い勢せ物語」「うつほ物語」などの物語や「古こ今き和歌集」をはじめとする多くの和歌、日記文学や漢詩文、仏典などからさまざまな素材や方法を吸収しつつ長大な虚構の世界を創り上げている。「夜よの寝ね覚ざ」や「狭さ衣ご物語」といった平安後期物語、あるいは和歌史における享受をはじめとして、その後の文学史、さらには絵画などの文化史への影響も多大である。近現代作家による現代語訳、諸外国語による全訳や抄訳も多数刊行されている。●第二部老境に入 晩った年の光苦源悩氏との孤もと独に年若い女お三さ宮みが降こ嫁かした。紫上の絶望は深い。一方、女三宮へ思慕の念を募らせていた柏か木ぎはついに女三宮と密通し、女三宮は男子(薫か)を出産。光源氏は、若き日の自らの罪の報いを実感する。その後、紫上に先立たれた光源氏は、悲嘆と孤独の中で出家の準備を進める。●第三部光源氏没 光後、源氏世の評子の孫高たい薫ちは、宇う治じで暮らす姉妹に出会い、姉の大お君ぎを思慕する。大君は薫の求愛を受け入れず死去。薫の思いは、妹の中なの君きへ向くが、中の君はすでに匂に宮み(光源氏の孫。今き上じ帝の第三皇子)の妻であった。薫は、大君に似る異母妹の浮う舟ふを見出し、通うようになる。しかし、好色な匂宮も浮舟を愛したため、その板挟みに苦しんだ浮舟は自ら死を選ぶ。僧に助けられたあと、尼になった浮舟の生存を知った薫は、浮舟の異父弟の小こ君ぎを遣わすが、浮舟は会おうとしなかった。▼巻名▼巻名ょうしわまぼろしおうょういがらびどりずまらいめのょう藤と式部。「藤」は父の藤原為た時とき(中流階級の貴めるけりんうがちえぶかめみきねきしやみかみんやうこえずしうりりかかきねげうげきとういけわしめ薫を抱く源氏(源氏物語絵巻)浮舟を訪ねる小君(源氏絵鑑帖)むらさきのろもんのんなおいおうしわおるょう物語教科書ではおなじみの教材として取り上げられることの多い「源氏物語」につい99 構成と概観「源氏物語」て、作者・紫式部、ならびに作品の構成や展開、全巻の名称を掲載しました。54 夢ゆ浮う橋は宇治十帖53 手て習な52 蜻か蛉ろ51 浮う舟ふ50 東あ屋や49 宿や木ぎ48 早さ蕨わ47 総あ角ま46 椎し本も45 橋は姫ひ44 竹た河か43 紅こ梅ば42 匂に兵ひ部ぶ卿き41 幻40 御み法の39 夕ゆ霧ぎ38 鈴す虫む37 横よ笛ぶ36 柏か木ぎ35 若わ菜な下げ34 若わ菜な上じ27※宇治を主な舞台とした、光源氏の子孫たちの物語。

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