探求 文学国語 ダイジェスト版
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1けは」しはけ、溜停ま泊り中 「のは本し船と陸との間を往復して貨物や乗客を運ぶ小舟。「はしけ溜まり」は、その舟が集まっている所。象と、小さな象使いの少年を乗せたいかだが、その港街にゆっくり流れ着きました。もう港はすっかり夜で、それまでにぎわっていたは1しけ溜だまりも、埠ふ頭ともひっそりと静まり返っております。痩せた野良犬が一匹、それまでたどってきた匂いの行方をそこで見失ってしまったせいでしょうか、ガス灯の下をぼんやりうろついているだけでした。「おや……?」と、最初にそれに気づいたのは、埠頭事務所のウルじいさんでした。「おーい……。」ウルじいさんは、いかだの上の少年に声をかけてみました。「どうしたんだい……?」少年はウルじいさんを見てにっこり笑うと、黙って沖の方を指さしました。「あっちから来たのかい?」少年はうなずきました。しかしそこには、闇に沈む黒い海が、重々しくうねりながら別べつ役やく 実みのる小説Ⅰ愛のサーカスう51030小説Ⅰ 〈Ⅱ部〉220

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