探求 文学国語 ダイジェスト版
22/68

晩秋のある日、日差しの明るい午後だったが、ラジオが洋楽をやりだすと間もなく、部屋の隅から一匹の蜘く蛛もが出てきて、壁面でおかしな挙動を始めたことがある。今、四年目に入っている私の病気も、一進一退というのが、どうやら、進の方が優勢らしく、春は春、秋は秋と、年ごとの比較が、どうも芳しくない。目立たぬままに次第弱りというのかもしれないが、それはとにかく、一日の大半を横になって、珍しくもない八畳の、二三か所雨のしみある天井を、まじまじと眺めている時間が多いこの頃であ畳に下りてあっちこっちしている。私の顔なんかにもたかって、うるさい。蠅のほかに天井や壁で見かけるのは、蜘蛛である。灰色で、薄う斑まのある大きな蜘蛛だ。左右の足を張ると、障子のひとこまの、狭い方からはみ出すほどの大きな蜘蛛だ。それが何でもこの八畳のどこかに、二三匹は潜んでいるらしい。一度に二三匹出てきたことはないのだが、慣れた私の目には、あ、これはあいつだ、と、その違いがすぐわかる。と壁思面わでれおる昔か一、し匹私なだも挙っ持動たっを。て見レいせコたたーやこドとつののは、「あ、チ2る中ゴハで3イイ一ネフ番ルェ小・ッさワツい演かイゼン」奏の赤の大盤に違いなく、鳴りだすと私にはすぐそれとわかったから、何か考えていたことを放り出し、耳は自然とその派手な旋律を迎える準備をした。かやが出がててき、たぼがんや、りそれ放っが蜘て蛛いでた、視壁線のの中角かに、らすするるすするるとと何一4尺ほど出てきたと思うと、ちょっと立ち止まった。見るともなく見ていると、そいつが、長い足を一本一本ゆっくりだら小説Ⅳ尾お崎ざき一かず雄お虫のいろいろえ00―す 5私が蜘蛛や蚤や蜂を見るように、どこかから私の一挙一動を見るやつがあるか―虫の様子をユーモラスに描き、私の思いをつづった小説です。米る1。も杉うの寒天い井か板らに、し羽が虫みつの類いいてはい見て、えな日のいが差、す蠅は間どは、もは縁側そやの101520小説Ⅳ 〈Ⅰ部〉150

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る