探求 文学国語 ダイジェスト版
13/68

比較で深める中島敦の「山月記」は、中国の唐代伝奇小説「人虎伝」に基づいている。この両者を比べてみると、「人虎伝」には、悩みや病のせいとはいえ、周囲の人々に対する李徴の許しがたい言動が荒々しく記されている。ところが「山月記」は、李徴を「詩人」として純化し、その内面の苦悩を精緻な筆致で描いてある。そして、そのことによって現代の読者にさまざまな問題を投げかけている。漢文の訓読体を巧みに用いた文体に注意しながら、唐代の小説が現代小説としてよみがえるその生成過程に注目してみよう。(ここには「人虎伝」の冒頭部分を掲載してある。)翻案 ―中国の古典から、日本の小説へ*「隴西」「虢略」▼参考 六二ページ「中国参考地図」* 隴ろう  2 よス く   不        つ  ル  3 十 4         か博       うん  み  西せいノ 善ク属 し文ヲ。天宝調セ5ラレテ 補セラル 跡ヲ卑ひ僚れ。嘗つ鬱うニねニ 李徴ハ、皇族ノ子し。家い於* 虢く略りニ。徴少わ五載ノ春、登ル進士ノ第ニ。後数ナリへス 疎そ逸い、恃た才ヲ倨き鬱ト楽シマ。毎ご同舎ノ会既ニ酣たル、顧ミ謂いシテ とニ 9わく やくのミテ うナ傲がリ。不ず能あ屈ステ 21属子 文 3天の玄げ宝宗そ十の五年載号 。七五六年。「天宝」は唐4登進士第 進士の試験に合格する。5調補江南尉 たハ 8けなは6疎逸  ヒテ7倨傲 おごり高ぶること。8屈跡卑僚 下級官に甘んじる。画。長江中下流の南側)にある県の治安・税務等を担当する官に任ぜられる。子孫。詩や文章を作る。江南道(唐代の行政区人と親しまず、勝手である。江南ノ尉ニ。徴性学、年、小説Ⅱなは生われは乃すち君き等らと伍ごを為なさんや〔人虎伝李り景けい亮りやう〕 1 6 7よ 「山月記」の直後に、典拠となった「人虎伝」を読み比べ教材「比較で深める」として配置。両者の読み比べを通じて、中島敦の創作手法に迫ります。  ナ クシテ 6011

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る