探求 論理国語・文学国語・古典探求 国語教科書のご案内
10/68

芸術も科学も「別世界」を見せる岡お田だ暁あ生お市民社会化する家族今いま村むら仁ひと司しになっていて、両者は互いに*相いれない人間の精神活動の領域と考えられているふしがある。「芸術は感性なんだから、理屈なんか考えずに、自由に想像力をはばたかせればいいんだ」とか、あるいは逆に、「科学は感性じゃなくて理性なんだから、実証できないものを科学に持ち込むのは客観的じゃない」とかいった決まり文句を口にするとき、人はこの「感性≠理性」の二分法にはまり込んでいる。しかし本当に「感性=主観的=証明できない」VS「理性=客観的=証明できる」なのか?いれず、理性と感性の中間にオ1ーバーラップ領域はなく、そして両者を足せばこの世の中になると信じるなんて、あまりに単2細胞過ぎる。など生まれようがないということは、例えばダ3・ヴィンチなどを考えればすぐにわかるだろう。「最後の晩ば餐さ」の構図は、芸術だの感性だのという以前に、まずは科学的空間認識だ。三次元の奥行きがあって、座標軸的でシ4ンメトリックかつ均質で、すべてが中心点からの遠近によって階層化され、統合された空間。これこそデ5カルトやニ6ュートンが思い描いたのと同じ世界像ではなかったか。世界の新しい見え方を数式や図の代わりに絵にすると、あのようになるのであって、それは単なる「きれいな絵」などではなく、新しい世界観の設計図なのである。こんな例はいくらでも挙げることができるし、ハートと感性だけで芸術創作を試みるなど、物理学的知識もなしに建築設計をしようとするに等しい。そんな建物はあっという間に瓦解してしまうだろう。オとかニュートンとかア8インシュタイン並み今日では芸術は「感性」に、そして科学は「理性」に属するものというのが半ば常識古くから芸術は深く科学的認識と結びついていて、そもそも科学性なくしては大傑作同じく近代科学もまた、少なくともガ7リレ両者は水と油のように相「のこ二の分『法感」と性は≠、ど理性うい』うことを表しているか。の中に二つの物事が重ここでは、考なり合って生じること。え方が単純であること。(一四五二~一五一九)。イタリアのルネサンス期を代表する芸術家。右対称。フランスの哲学者。イギリスの数学者・物理学者・天文学者。イタリアの天文学者・物理学者。の理論物理学者。均質二分法階層化*相いれない瓦解overlap(1オーバーラ英ッ語プ)。 意識2単細胞 3ダ・ヴィンチ Leonardo da Vinci4symシンmetric(メトリッ英ク語 )。左5Descartes(デカルト 一五九六~René 一六五〇)。6ニュートン一六 四二~一七二七)。Isaac Newton(Galilei(Galileo 教科書271ページ7ガリレオ一五 六四~一六四二)。Albert Einstein(8アインシュタイン 一八七九~お薦め評論一九五五)。ドイツ出身一昔前までの家族の研究は、封1建的家制度と近代的家族との比較に重点を置いて、家族面における封建制から近代への移行をポ2ジティブな歴史的成果として評価するものであった。一部の例外を除けば、多くの学者たちは、戦後日本の民主化の前進に貢献することに情熱を燃やしていたのである。一九六〇年代までの思想状況は、経済生活の安定化と生産力の上昇に基づく高度産業社会の進展に助けられて、かなり明るい歴史的展望を描き上げることができた。大家族制度は封建制度であり、その崩壊はデ3モクラシーの前進にとってはけっこうなことであった。政治的、経済的なレベルでのデモクラシーと家族のレベルでのデモクラシーとは並行すべきものであった。そして、事実、事態はそのように進んでいった。こうして、家族の面でもモ4ダニティーが成立する。モダンな家族とは、核家族のことである。高度生産力による大量消費社会または大衆社会の確立と近代家族の成立とは同時的である。ひとわたり大衆社会や消費社会を経験した後で、いま一度近代家族のあり1の封上建下的関家係制を度重 んじ、2ポジティdemocracy(3デモクラシー 英語)。modernity(4モダニティー 英語)。限する制度。個人の権利や自由を制的。(英語)。肯定的。積極民主主義。「モダン」であること。近代性。「う近家代族家形族態」かは、らどどうういいう家族形態に変化して「成立」したのか。ブ positive家族内00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130評論Ⅳ「最後の晩餐」(レオナルド・ダ・ヴィンチ画)評論Ⅱ評論Ⅱ評論単元入試を見据え多角的な視点を学べる評論教材を多数採録しました。5んん 15か け1  0015 1 『探求論理国語』 のご案内1510100908070605040302010130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0100908070605040302010130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130100908070605040302010130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 1301010271 市民社会化する家族資料: 1965〜2015年:国勢調査、2020年以降:「日本の将来推計人口(平成29年推計)」。110262111 芸術も科学も「別世界」を見せる2020年2040年 人口ピラミッドの推移1965年出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ男 性人口(万人)男 性人口(万人)男 性人口(万人)後期老年人口前期老年人口生産年齢人口年少人口後期老年人口前期老年人口生産年齢人口年少人口後期老年人口前期老年人口生産年齢人口年少人口女 性女 性女 性お薦め評論10教科書110-111ページ芸術も科学も「別世界」を見せる市民社会化する家族教科書262ページ芸術は科学であり科学は芸術である。「別世界」への道を開くには、亀裂と跳躍を必要とする   芸術や科学の持つ魔術性を述べた評論。近代社会では市場経済の法則が家族の中にも持ち込まれるが、それにどう抗すべきか   歴史的視点から家族のあり方を考える評論。

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る