探求 現代の国語/探求言語文化 付属教材・資料見本
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3発展…発展的な位置づけとなる解説や資料を豊富に掲げました。文学・古典教材については、作品をより深く鑑賞するための解説を掲げました。 賞参考図書3発展伊勢物語(芥川)教科書(六五〜六七)そして、男の思いの頂点として、また、歌物語全体の頂点として、「白玉か」の歌が配されるのである。 「白玉か」の歌は、女の問いに答えて自分も一緒に死ねばよかったという、一人残されてしまった男の嘆きを詠んだものだ。「真珠なの?が夜露なのですよ」というたわいない問答でも、今となってはいとしい女と共有できたはずの貴重な瞬間だったのだ。歌には、一時は自分の手の中に入れえた女との、夢と終わってしまった対話へのはかない耽溺にすがろうとする男の思いもほの見える。だが、その耽溺の夢想によって、かえって取り返しのつかないことへの切ない悔恨が倍加されてしまっているのである。なお、「伊勢物語」を最初から読んでくると、第一段で初ういこ冠うぶりし、初恋を体験した(業平らしき)男が、(二条后らしき)高貴な女性への思慕を募らせ、第六段ではその女性を盗み出すが、失敗し、失意の心を抱いて第九段などに描かれた「東下り」へと続いていくように読める。 「伊勢物語」の注釈の歴史は平安時代末期から始まり、質・量ともに「源氏物語」に次ぐ。ここでは、昭物語と軍記古来「鬼一口の段」などと呼ばれ、「伊勢物語」の中でも特に名高い話の一つである。冒頭「昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、」まではほかの段と同じようなテンポで語られているが、その後、「からうじて……」以下は漸層的に調子を高め、緊迫の度を高めていって、女が鬼に食われる事件の頂点にまで押し上げる。具体的に本文をたどれば、とで女を盗み出して芥川に至るが、夜も更け、行く先はまだなお遠い。その上雷鳴と稲光に脅かされ、激しい雨にまで見舞われ……と、行く手を阻む困難をたたみかけるように描き、破局に向かって調子を盛り上げていくという具合に作者の筆はさえる。一方、男の心はいとしい女を手に入れて高揚したが、逃避行の困難さにしだいにそれは焦りに変わり、激しい雷雨の闇の中ではひたすら夜が明けるのを祈り待つ。だが朝になって見れば、荒れ果てた倉の中に入れておいた女はいない。足ずりして泣くがどうすることもできない。「戸口に居り。」「女もなし。」「かひなし。」の現在形が臨場感を与え、読者を物語世界に引き入れる。男はやっとのこそれとも何?」「あれ参考図伊書勢物語・大和物語・平中物語』(平6・小学館)・掲教物秋げ材山語』虔ま研(ほ平し究か9『やた・新岩授。日波本業書古店研典)文究学に大系役 立竹取つ物図語書・伊を勢和以降のもので容易に入手できるものに限って掲げた。・大津有一・築島裕ほか『日本古典文学大系語・伊勢物語・大和物語』(昭32・岩波書店)・折口信夫『折口信夫全集(昭45・中央公論社)・森野宗明『伊勢物語』(昭47・講談社文庫)・福井貞助ほか『日本古典文学全集物語・大和物語・平中物語』(昭47・小学館)・森本茂『伊勢物語全釈』(昭48・大学堂書店)・片桐洋一『鑑賞日本古典文学(昭50・角川書店)・渡辺実『新潮日本古典集成社)・阿部俊子『伊勢物語上・下』(昭54・講談社学術文庫)・中野幸一・春田裕之『伊勢物語全釈』(昭58・武蔵野書院)・竹岡正夫『伊勢物語全評釈』(昭62・右文書院)・新井無二郎『評釈伊勢物語大成』(昭63・パルトス社)・福井貞助ほか『新編日本古典文学全集竹取物ノート編十三伊勢物語』竹取物語・伊勢伊勢物語・大和物語』伊勢物語』(昭51・新潮竹取物語・鑑賞70      ―    鑑   *言語文化 指導資料(古文編)

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