探求 現代の国語/探求言語文化 付属教材・資料見本
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単元の包括的なねらいと位置づけ、学習する教材の構成と特徴を示しました。ご授業にあたっての基本方針を立てる際などにご覧ください。単元のねらい単元の構成単元のねらい・に単関す元るの知構識を成深め︑多様で豊かな感受性を育み︑自己表現へつ 「古文入門」の単元で身につけた基礎的な知識と方法をもとに︑「随筆」と「日記」を学んできたが︑ここでは「物語」と「軍記」について学習する︒ 「随筆」「日記」は作者が明らかであり︑その人生や価値観が濃く表れた文学である︒その意味では︑個人という存在によって創作されている近代以降の文学に近い性質もあるだろう︒それに対して︑「物語」「軍記」は︑教科書のコラム3「『語り』の文学」に明らかなように︑伝聞・伝承された話型や語りの方法を利用しており︑同時代の集団性や伝統的な価値観をより強く残している︒したがって︑現代とは異なる枠組みによって成立している文学世界であることを理解したうえで︑ストーリー展開や登場人物の心情・行動を読み解かなくてはならない︒確かに︑そのようなことを考えなくても︑普遍的に理解し共感できるところはあり︑それも古典としての魅力ではある︒しかし︑異なる枠組みにおいても普遍的な価値があると理解することや︑現代の価値観では理解しがたいことを正確に押さえるためには︑やはり同時代についての知識が必要となろう︒それによって古典は︑より的確により深く理解できるようになるものなのである︒ 「物語」分野は︑作り物語の「竹取物語」︑歌物語の「伊勢物語」を︑「軍記」分野は︑「平家物語」を取り上げた︒まずは︑ストーリーを正確に捉え︑登場人物の行動や心情を理解したうえで︑自分に引き付けて感じたり考えたりすることが目標である︒さらに︑文体や表現の違いがどのような効果を生んでいるのかなど︑古典ないでいけるようにしたい︒作り物語・歌物語・軍記というジャンルの違いは︑文体や表現方法︑また背景となる時代や社会を反映したものである︒ 「竹取物語」からは︑二つの場面を取り上げた︒冒頭の「なよ竹のかぐや姫」は︑伝承文学の枠組みを強く残しており︑まさに物語の祖先というにふさわしい︒それに対して末尾に近い「かぐや姫の嘆き」は︑人物造形に作者独自の試みが生かされている︒両者を読み比べ︑物語史の一端を理解したい︒ 「伊勢物語」からは︑五つの章段を取り上げた︒「芥川」は︑女を盗む話型を利用したもの︒「東下り」は︑政治よりも恋愛をテーマにした貴種流離譚の新たな形︒「筒井筒」は男性からの視点︑「梓弓」は女性からの視点によって︑当時の男女関係のあり方を捉えている︒「小野の雪」は︑親王と翁の主従関係を描いたもの︒いずれの章段も︑配された和歌が効果的に機能し︑物語を彩って登場人物を魅力的なものにしている︒ 「平家物語」からは︑二つの場面を取り上げた︒「祇園精舎」には︑「諸行無常」と「盛者必衰」という︑作品を貫く思想が示されている︒「木曽の最期」は︑平家を破りながらも︑義経によって滅亡を迎える義仲の悲劇を描いたもので︑まさに「盛者必衰」を具現化したものである︒語りのリズムとともに︑生き生きとした戦乱の世界を味わいたい︒ジャンルによって︑昔物語や話型・和歌・語りという表現の特徴があり︑テーマもさまざまなこれらの作品を読むことで︑古典を代表する文学作品への理解を深めたい︒それによって︑古典に対するさらなる探求心へ︑そして今後の学習の発展へつながることが期待できる︒62  竹取物語伊勢物語平家物語*言語文化 指導資料(古文編)物語と軍記

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