毎回,ある職業の人をとりあげて,その素顔に迫ります。

第16回 書店社員



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 最近,若い人が本を読まなくなったといいます。でも,本屋さんに全然行かないという人はいませんよね。それに,どんな小さな街にも本屋さんは必ずあるはずです。なんだかんだ言っても,本は私たちの生活になくてはならないものなのだと思います。ということで,今回は,東京は池袋のジュンク堂池袋店で働くMさんを訪ねました。ジュンク堂池袋店は,売り場面積日本一を誇る超大型書店です。Mさんはその8F(学参売り場)で働いています。さて,どんな仕事をしているのでしょうか?



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Q Mさんは,入社2年目だそうですが,どうして書店に就職しようと思ったんですか?

 最初は図書館の司書になりたかったんですけど,司書の勉強をしているときに書店のかたの講演会のようなものがありまして,そのかたのお話を聞いて,書店もいいな,と思ったんです。私の場合,大学院に行っていたので,普通の新卒の方よりも年齢が上なのですが,その点,書店は不利になるということが少なかったということもあります。

Q 大学院では何を勉強していたんですか?

 ロシア文学です。ドヴラートフという現代作家を専攻していました。

Q 昔はトルストイとかドストエフスキーとかは必読書でしたけど,今はあまり読まれなくなりましたよね。なにしろロシア文学は登場人物の名前を覚えるのが大変で……。

 よくそう言われます(笑)。でも,ドヴラートフは登場人物が限られていて,わりと読みやすいんですよ。おもしろいですし。もっと評価されてもいい作家だと思います。

Q やっぱり本が好きだったんですね。

 そうですね。小さいときから本は好きでした。でも,家にこもって本ばかり読んでたというわけではないんですよ。どちらかというと活動的なことが好きな性格ですし。

Q そういえば本屋さんの仕事は立ちっぱなしだし,本は重いし,結構重労働ですよね?

 そうです。体力勝負です。でも,最初のうちは大変だなって思いましたけど,すぐに慣れました。今はあまり苦になりません。

Q 大型書店だといろいろな売り場がありますが,売り場への配属は希望が通るんですか? ジュンク堂さんの場合だと,店舗もいろいろあるので,転勤の問題なんかもあるんでしょうか?

 一応希望をだすことはできますけど,最終的には会社が決めます。社員は総合職と専門職に分かれているんですが,私は専門職なので,基本的に転勤はありません。総合職は転勤もあります。
 総合職と専門職の違いは,この転勤があるかないかぐらいしかありません。やってる仕事も基本的に同じです。
 ただ,正社員はもともと少ないんです。このフロア(8F)では12,3人が働いていますが,正社員は3人だけです。あとは定時社員とアルバイトです。アルバイトは学生さんが多いですね。

Q 定時社員というのは契約社員のようなかたですか?

 はい,そうです。長年この業界で仕事をしているベテランの方も多くて,私も最初のころは定時社員の方に仕事を教えてもらいました。

Q 本屋さんの一日を順を追って説明していただけますか?

 まず,早出と遅出がありまして,早出だと9時半から6時まで,遅出だと12時半から9時までです。もちろん忙しいときには,それぞれ残業があります。
 遅出だと朝は楽なんですけど,終わるのも遅いので,どちらかというと早出のほうがいいという人が多いですね。
 早出の場合,9時半に出社するとすぐに朝礼があります。社員が全員1階に集まって連絡事項などを確認するんです。それが終わると各フロアに戻って,開店の準備をします。お店は10時に開店します。午前中は,大体客注(お客さんからの注文)の処理をすることが多いですね。今はインターネットでの注文も増えていますので,その処理もします。
 取次(出版社と書店を結ぶ流通業者)からは次々と本が入荷しますので,入荷した本はその都度棚に並べていきます。ほとんど一日中,ひっきりなしに入荷します。
 午後はお客様が増えてきますので,お客様への対応が多くなってきます。

Q これだけの本を扱っていると,品切れを把握するのも大変でしょうね?

 どの棚にどんな本が入っているかは自然と覚えてしまいます。品切れをおこす本というのは,大体が売れている本なので,なくなればすぐにわかります。でも,棚に1,2冊しか入ってないような本だと,品切れに気づかないこともあります。
 ただ,出版社の営業のかたが時々来てくれて,棚を確認してくれますので,助かっています。なくなっていれば教えてくれますから。それに,出版社のかたは,当たり前ですけど本の内容をよく知っていますから,いろいろと教えてもらったり,情報を提供してもらったりします。

Q 学参売り場だと,受験生やこどもたちから,お姉さんこれとこれどっちがいいの,なんて聞かれるんですか?

 はい,よく聞かれますね。そういうときはあんまり無責任なことは言えないので,こちらのほうが人気がありますなどとお答えしています。学習参考書はとくにお客様自身の目で使いやすさなどを確認していただくことが大事ですから,あまり先入観を与えてしまうようなことは言わないようにしています。

Q どの本を重点的に扱うか,などということはどこで決めるんですか?

 ジュンク堂では担当者に任されています。それだけ責任が重いですけど,やりがいはあります。
 そもそも,一般の会社みたいに上下関係とかはあんまりないんですよ。上司といっても役職名で呼ぶことはないですし,そういう点ではやりがいがあると同時に,とても働きやすい環境ですね。
 それにここでは,レジが1階に集中されていますので,各フロアの担当者はその担当の分野に専念できるんです。だから,それだけ専門性を身につけることができるし,また,そうしなければならないと思っています。

Q お客さんの中には,面倒なことを言ってくる人もいるでしょうから,接客は大変でしょうね?

 確かにお客様への対応が一番難しいし,大変ですけど,でもそれが一番おもしろいですね。私は接客が好きなんです。


Q 一番やりたい売り場はやはり文芸関係ですか?

 最初は文芸書をやりたいなって思っていましたが,学参売り場には学参売り場の楽しみがあって,今は満足しています。とにかくこの書店にはあらゆる本があるので,興味さえあれば何でも楽しいと思いますよ。

Q 最近,書店での万引きが増えているために書店の経営がかなり苦しくなっていることが新聞などで取り上げられていますけど,その辺はいかがですか?

 万引きは犯罪ですから,もちろん問題です。ジュンク堂でもできる対策は講じています。ただ,それ以上に大切なのは,やはり何といっても,ご来店いただいたお客様が安心して本を選ぶことができるような店づくりだと思います。





<<<<<取材後記>>>>>


 取材にうかがったのは平日でしたが,それでもお客さんでいっぱいでした。休憩時間以外,ほとんど息を抜く間もないほど忙しそうでしたが,Mさんのお顔は生き生きとしていました。全然違う仕事を選ぶとしたら,次は動物園に勤めてみたいと言うMさん。それも自然科学のコーナーで見かけた写真集の影響です,と笑っていました。これから新学期が始まる4月にかけて,学参売り場は忙しさのピークを迎えます。体に気をつけてがんばってくださいね。それから蛇足ながら,万引きは犯罪です。絶対にやめましょう!

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*ジュンク堂書店



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