
毎回,ある職業の人をとりあげて,その素顔に迫ります。
第9回 マンガ雑誌編集者
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みなさん,マンガは好きですか?
最近,私は手塚治虫の作品を読む機会がありました。子どもの頃はよく理解できなかったストーリーだったのですが,今読み返すと考えさせられることばかりで,改めて読んでよかったと思っています。
現在テレビ放送中の「ブラックジャックによろしく」,「きみはペット」,「動物のお医者さん」,「伝説のマダム(原作タイトルは『男たちのウエディングウエディング』)」,「ホットマン」などは原作がマンガですよね。
私たちにさまざまな感動をあたえてくれるマンガは,いったいどのようにして生みだされているのでしょうか。
今回インタビューをしたのは,マンガ雑誌編集歴4年の望月伊佐子(大卒,26歳)さんです。
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Q.マンガ雑誌の編集を選んだ理由は?マンガが好きだったのですか?
その通りです!
私は子どもの頃からマンガにたくさん夢をもらっていました。『生徒諸君』を読めば「先生っていいなぁ」と思い,『ブラックジャック』を読めば「医者っていいなぁ」と素直に感動します。『白鳥麗子でございます』を読めば,「ひとりの人をこんなに好きになれるっていいなぁ」と感心しています。まあ,ただ単純なだけなんですけど。
以前は,受験雑誌の編集をしていたのですが,マンガに異動する機会があり,今マンガの編集をやっています。
Q.具体的にどんなお仕事を担当しているのですか?
20代後半から30代前半で,仕事をしている未婚女性が主な読者層の女性漫画誌を作っています。
担当している連載漫画家では柴門ふみさん。ほかに何人か担当してます。そのほかには読者ページなどの記事ページを構成したり,巻頭の読者プレゼント口絵を作成したり,新人マンガセミナーの担当をしたりしています。
Q.新人マンガセミナーとは?
将来漫画家をめざす素人の方から編集部に送られるマンガの原稿を読んで,感想や改良点を編集部で論議し,それを講評します。添削形式で本人に送り返すという講座です。
デビュー前の投稿者から,新人漫画家の発掘したり・育成したりというのも,マンガ編集の大きな仕事の一つなんですよ。
Q.担当の漫画家とはどのように打ち合わせをするのですか?
打ち合わせのしかたは編集部によっても編集者によってもさまざまです。
私の場合ですが,第一回目の打ち合わせは,漫画家と編集者とのフリートークで,いろんなことを話します。次はどんな話にしましょうか,とか,今どんなものを描きたいですか,とか,どんなものに興味がありますか,とか。連載といっても読みきり連載にするか,ひき(続くかたち)連載にするか,ストーリー構成をどうするか,とか。話しながら企画を固めていきます。
この話し合いのあと,漫画家が「プロット」とよばれる話の筋を文章で書きます。「○○な感じの話」と,大雑把に3行くらいしか書かない漫画家もいれば,小説のように長いストーリーを書く漫画家もいます。このプロットをもとに,決められたページ内に収めるために構成を練ります。
そして「ネーム」に入ります。「ネーム」とは,そのプロットをコマで割ってマンガにおこしていく作業です。ひとコマごとにどういう絵を入れるか考えて,具体的なセリフ出しをしていきます。マンガは文字ではなく「絵」で見せるものなので,見せ場が必要です。どの絵を大きくしたらいいか,などを考えます。限られたページ数の中でどのようなストーリー構成にするかを決める作業なので,漫画家も編集者もとても真剣ですよ。
このとき,編集者が絶対間違えてはいけないことがあります。
台割(だいわり。表紙から背表紙まで,全ページの配置を決めること)によって,1ページ目が左側にくるか右側かが決まるのですが,漫画家は,作品を見開きにしたとき,いかにきれいに見えるかを考えて絵を書くので,最初の1ページ目の左右を間違えると,絵の構成がずれてしまい,読者にとても不自然な印象を与えてしまうことになります。担当編集者はこの根本を間違えると,本当に大変です。
この後は,ベテランの方ならそのまま「ペン入れ」をし,背景やトーンなどを書き足す作業をしていって,原稿完成となります。
新人の方だと,一つ一つの絵を編集部で気をつけて見なくてはいけません。
というのも,本人は気がつかないうちに不自然な絵を書いてしまうことが多いんです。「人間の体はこんなねじれ方はしない」ポーズの絵とか,「コップを真上から見ている構図なのに,真横から見た絵を描いている」とか。遠近法はマンガを描くときに必要な技術なので,細かく指導をしていきます。そのほかには,さっきまでスカートをはいていた登場人物が急にパンツになっていたりということがないように,登場人物の統一感に気をつけます。
Q.漫画家から原稿をもらった後の作業は?
この作業も編集部によって異なりますが,「ネーム指定」という作業が始まります。吹き出しの文字や心の中のせりふの文字など,絵に合うように文字の大きさや形(書体)を決めます。
製版所で文字と絵をあわせ,できあがったものをチェック。例えば,文字と絵が重なっていないかとか,誤字や脱字がないか,とか。訂正箇所を直してもらったら,次は印刷所にわたします。発売日の8〜10日くらい前ですね。ここで編集部の手を離れていき,印刷→配本と,みなさんの手に届きます。
Q.今の仕事をしていてよかったと思うことは?
好きな作家に会える確率が高いこと,自分が発信型の側に立てることです。発信型とは,例えば「こういう考え方もありなんじゃない?」とか「人って実はこうなんじゃない?」と新しい視点を提供したりということです。
好きな作家といえば,まさに今担当している柴門さんは以前からファンだったのですが,実際にお会いして,やはりすごい方だと実感しました。大人気にもかかわらず,人の話は真剣に聞く謙虚な方ですし,今の若い人はどういう感覚を持っているのだろう?という探究心も常に持っている方です。
あとは,ずっと会社の中にいる必要がないこと。「世の中」がどうなっているのか,現場の声を作品に生かすことが大事なので。友達と話す何気ない会話も実はとっても大事な材料なんですよ。
また,別の編集者は,書店で「このマンガっていいよね!」と見知らぬ人が自分の担当作品をほめてくれるときに,至上の喜びを感じると言っていました。ここの会社では,編集者と漫画家が一緒に話をつくっていくので,全く対等な立場という方針を持っています。編集者は名前が表に出ることはありませんが,影武者的存在で作品に大きく携わっているんです。
Q.今の仕事をしていてつらかったことは?
読者の反応が得られなかったときですね。自分が作品に込めたメッセージが届いていないと思うときはつらいです。ストーリーが思い浮かばないときもつらいです。常に世の中の流れに対してアンテナをはっているのもけっこう大変なことですよ。あと,時間が不規則なことでしょうか。(*注 インタビューに伺ったのは,平日の午後1時半だったのですが,編集部内は閑散としていました。夕方にならないとみなさん集まってこないとのこと。また,忙しい時期と忙しくない時期がかなりはっきりしていて,ほぼ一週間〜10日周期で繰り返されるみたいです)
Q.高校生にアドバイスをお願いします。
「ミーハーであること」これが,マンガ編集者に必要な要素だと思います。
本でも映画でも店でもなんでも見ておくことです。これはすべてに対して面白いと思うことではなく,むしろ面白くないと思ったり,疑問をもったりすることのほうが大事かも。例えば,本だったら「どうしてこんなに面白くない本をつくったんだろう?自分だったらこうするな」とか,映画だったら「どうして主人公はこんな考え方をするのだろう?自分だったらこう考えるのに」とか。
たいていのことに答えは出ないかもしれませんが,情報をまず自分で受け止めて,自分の頭で考えることが大事なんですよ!
《取材後記》
望月さんが今一番気になっているモノは「ジーンズ」だそうです。理由は「足を細く長く見せたいという日本人のコンプレックスを見事に克服できるものだから」とのこと。
ふと見過ごしてしまいそうなコト・モノに対する,独自の鋭い分析に驚きました。こんな身近なところからマンガのストーリーができあがっていくんですね!
さて,あなたが最近気になっているものは何ですか?それはなぜですか?
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