
毎回,ある職業の人をとりあげて,その素顔に迫ります。
第4回 ベンチャー企業の社長
今月は,「ベンチャー企業」をとりあげます。
新聞や雑誌を読んでいても「不況」「リストラ」など,暗い話題が続く今日この頃。失業率も就職率も過去最悪だと報じられています。
そんな中,どこかの「会社」に就職するのではなく,「自分で会社をおこしてみよう!」とたちあがった人にインタビューをしてきました。
なんと,今回インタビューした有限会社ブレインアシスタントの黒木さんは,起業家でありながら国立大学の大学院生でもあるのです。
いったい,どのような毎日を過ごしているのでしょうか。
Q大学院では,どのようなことをしているのですか?

★まず,大学院生(博士課程)の生活について説明しますね。
これは担当教授によってまったく異なってきます。あえて例えると恋愛みたいなもの。放任主義の教授もいれば,束縛するのが好きな教授もいます。そうすると携帯電話でしょっちゅう呼び出されたりもしますよ。本当にその研究が好きな人でないと続かないし,つらいだろうなと思います。もちろん学生なので「無給」ですし。なので,学校で得た知識を生かしてお金を稼ぎたい人は,大学に残らず,早く企業に行ったほうがいいですね。
また,いわゆる「時間割」もほとんど無きに等しいんです。というのも,大学院は「解剖実習○月×日〜7日間。参加すれば2単位取得。」というような授業の割り振りがほとんどなので,毎週同じ先生の同じ授業を同じ教室でうける・・・というイメージとはちょっと違うんですね。だから今,仕事と両立できているんです。
大学院の専攻は脳神経医学です。
「MRI」って聞いたことありますか?(写真参照)そのMRIがここ10年で非常に進化して,今は脳の中の血液の流れをみることができるようになったんです。脳のどこに血液が流れるかによって,人はどんなときに,脳のどの部分を使うのかがわかるようになりました。
例えば,絵を見るのが好きな人とそうでもない人とでは,絵を見たときに脳の中の血流が全く違うんですよ!
Qでは,その「脳」についての会社なのですね。
★そうです。私は「脳」について語りたい,その一心でこの会社を創りました。
今までの教育は受験勉強に顕著なように,いわゆる「インプット」型の勉強ですよね。パソコンがあまり普及していない時代にはインプットも必要な能力ですが,今この時代は,データを記憶するインプットの作業は,脳の変わりにパソコンがやってくれるんです。
なので,今後は「インプット」よりも「アウトプット」の能力が人には必要になってきます。「アウトプット」とは,何かを発見したり表現したりすることで,いかにインプットしたものを引き出してくるか,ということです。このアウトプットは今まではほとんど重視されていなかった。ようやく学校でも「総合的な学習の時間」が設けられてきたところですから。
このように,私は今が日本社会の価値観の大きな転換期だと感じています。それを多くの人に訴えたい,感じてもらいたい,聞いてもらいたいということでこの会社を創りました。
Q具体的には,どういうことを行っている会社なのですか?
★大きく分けて2つのことをやっています。
1つめは,「話す」活動です。先ほど述べましたが,私の専門は脳を初めとする医療分野です。「予防医学の推進」という観点から今の医療界を変え,それが日本再生の起爆剤につながるように働きかけていきたいと思っています。各地をまわって講演会を行うこともありますし,ある会社の役員会や朝礼で講演をしたり,個人的な医療コンサルタントをしたりということもあります。これは場合によって報酬を頂いたり頂かなかったりなので,今はまだ採算を考える段階ではありませんね。でもいつか必ずビックビジネスになると信じてやっていますよ!
2つめは「モノ」を扱う事業です。同じく「予防医学」の観点から,今話題のサプリメント等を扱ったりもしています。
Qいつごろから会社を興そうと思っていたのですか?
★大学生のときに,「アイセック」という全国規模の学生団体が立ちあげた「KING」という学生の企業ビジネスコンテストに参加したのが一番最初のきっかけです。
学生時代に本当にたくさんの起業家,また起業を目指している人々に出会って,感化されていきました。先輩が渋谷に大きなオフィスを構え,何億という大金を自分の意思で動かしているのを目の当たりにしたときは,言葉に表せないくらいの大きな衝撃を受けましたよ。
また,学部学生時代に一年ほど自由な時間をつくり,地球を一周していろんなことを肌で感じ,見てきました。そのときにずいぶんと視野が広まったと思います。なぜ日本人は一生あくせく働くのか,働くことが美学とされるのか。国内にいたら当たり前なこととして疑問に思わないことですが,「なぜだろう」と改めて強く感じました。そんなに働かなくても生きていける人を世界中でたくさん見ましたからね。
私は今,10年後には世界中を旅して回る生活を送りたいと思っています。そのために,今は土日も休日もなく駆けずり回っています。あくまでも10年後に働かなくてもいいくらいの富を生み出すためにですから,その努力を今は惜しみません。
Q会社を興すときには,どのような準備をしたのですか?
★まず,定款を作りました。
どういう会社か,ということをまずはっきりと決めなければなりません。
できた定款を担当の公証人役場で認証してもらい,それから担当の法務局に行って登記をします。その後税務局に法人としての登録をします。
ここまでに登記料など諸経費が30万円ほどかかりました。一連の手続きはちょっと面倒ですが,やれば誰でもできます。司法書士に頼めば50万円ほどかかるらしいですが,代理でやってくれます。
社員は私のほかに2人です。これで仕事がやっていけるのか疑問に思うかもしれませんが,仕事の内容によってその都度協力してくれる人を集めます。好きな人が好きな仕事を受け持つほうが,早いし正確な仕事ができるんですよ。常に何人も雇っていると,毎月のお給料を払わなくてはいけませんしね。今はまだそんな余裕はないので,一番コストがかからない方法をとっています。
Q資金はどのくらいかかりましたか?
★有限会社なので資本金が300万円,先ほど述べた登記料等が約30万円,それくらいですね。
事務所は自宅の一室ですし,仕事はパソコンとプリンターと頭と体があれば十分なので。最低限の金額しか使っていません。
今は,国や自治体でもいろんな起業支援が行われているようですので,そういうのを見つけて利用するのも手です。
Q今後の目標は?
★ノーベル賞をとることのできるような優秀な仲間をたくさん持ちたいですね。
遠い将来は,自分が賞をあげる立場になっていたいです。10年後は仕事に縛られない自由な時間を享受したいと思っていますから,これからたくさん優秀な仲間を集めなければいけません!
あとは,日本をもっともっと世界に誇れる国にして,世界中どこに行っても日本語が通じるくらいにできればいいなぁと思います(笑)だって,これからは「アジアの時代」ですから,まんざらありえないことではないですよ。
Q高校生に一言アドバイスをお願いします。
★「自分はこうなりたい・こうしたい」という夢,あるいはイメージを持つと,自然とやるべきことが見えてきますよ。
私は「旅行がしたい。研究がしたい。日本を良くしたい」とおおまかに3つのことを考えています。しかし,これらのことはどう考えても企業に就職したところで叶わない。だから自分で会社を創りました。
高校生のなかには,これから大学受験を控えている人もいらっしゃるでしょう。何をしたいかはっきりとわからない人は,何かをつかむために大学に行くのもよいと思います。また,自分の実力よりもちょっと上の大学を目指せば,合格後には,1つのことをやり遂げたという強い自信がつきます。それだけでも大事な経験です。がんばって下さい!
逆に,やりたいことがはっきりしていて,そのためには大学に行ってもダメだということが明らかなのであれば,別に行く必要はないと私は思いますよ。
起業家を目指している人は,何か自分でサークルを創ってみると起業のイメージがしやすいでしょう。
例えば,無から何を生み出すか,いかに多くの優秀な人材を集めるか,その人たちをどうまとめていくかなど,「リーダーとは?」ということを身をもって体験することができます。このことは,今の教育システムではなかなか体験できませんからね。
何か大きなことをしたい,こんな夢を事業として現実化したいとたくらんでいる高校生の方は,ぜひご一報いただきたいですね。一緒に何かできるかもしれませんよ!
連絡先
有限会社 ブレイン アシスタント
黒木
tel 03-5684-0506
e-mail soozoojp@anet.ne.jp
≪取材後記≫
年末年始の予定を伺ったところ,元旦の日から起業家同士の決起会に参加されるそうです。また,週に数回は異業種交流会に出席されるということで,いかに人のつながりをつくり,信頼を得ることが大事かを訴えていらっしゃいました。そのためには時間を守る,約束を守るという基本的なことができるかどうにかかっているそうです。
「会社の規模は全然違うけど,たとえビルゲイツと会ったとしても,社長という対等な立場で接することができるのは非常におもしろい」という一言には,黒木さんの前向きさを感じました。会社を創ったことを心から楽しんでいらっしゃるようでした。
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