毎回,ある職業の人をとりあげて,その素顔に迫ります。
第2回 ケアマネージャー



 今月は「ケアマネージャー」を取り上げます。
 高齢化社会がどんどん進んでいる日本。公民の教科書でも多々取り上げられているとおり、「福祉」や「介護」というのは、これから日本にとって重要なキーワードの一つであることは間違いありません。
 そこで、今回は「ケアマネージャー」の方々にインタビューを行いました。 。
取材に伺ったのは、渋谷区にあります「NPO渋谷介護サポートセンター」です。ここが入り口です。

*介護サービスを受けるには??
 まず前提として、介護サービスは勝手に与えられるものではない、ということを知っていてください。
 では、介護サービスを利用するにはどうしたらよいかというと、寝たきり・痴呆などで介護が必要になったり、日常生活に支援が必要になったら・・・
 @市区町村に要介護認定の申請をします。
 A認定がおりたら、居宅介護支援事業者(ケアプランを作成する事務所)を選び、介護サービス計画の作成を依頼します。
 B介護支援専門員(ケアマネージャー)がケアプランを作成します。


参考になりますよ! *ケアマネージャーとは?
 ケアマネージャーとは、保健・医療・福祉サービス従事者のうち、一定の実務経験があり(詳細は後述)、試験に合格した後に実務研修を修了した人で、利用者からの相談に応じて、利用者の希望や心身の状態にあったサービスが利用できるように、区(市町村)、在宅サービス事業者、介護保健施設などとの連絡や調整をおこなう「介護支援専門員」です。
 ケアマネージャーは、介護サービスの利用者や家族に会って、利用する方の困ったことや今後どういう生活をしていきたいかを具体的にお聞きし、利用される方にあったケアプランを作成します。(前提に介護サービス契約作成の契約があります)
 また、毎月必ず国保連(国民健康保険団体連合会)に、それぞれの担当している方のサービス料金の請求と利用料金の管理、サービスが実際に入っているかの確認をし、それらをまとめた書類を提出します。





*具体的にケアプランの立て方を教えてください。
 たとえば、デイサービスを利用したいと思う方がいらっしゃるとします。ついつい「じゃあ往復の送迎が必要ね」と思いがちなのですが、人によっては、片道だけの送迎でよかったりもするわけです。往復の送迎か片道の送迎かによって、利用料金が変わってきますので、本当に必要なサービスを見極めなければなりません。
 このようにさまざまなケースに対して、利用者が満足のできるサービスをきちんと提供できるかをサービス事業所の方と話し合い、調整をします。この調整作業がとっても大変なんですよ。介護サービスを受けたい時間というのは、どうしても昼間に集中してしまうので、なるべく本人の希望の時間帯にサービスが受けられるように、事業所を探します。そして最終的に「Aさんのお宅には○曜日の×時に、Bさんが△をするために伺います」というプランができあがります。このプランが(値段も含めて)本人の希望どおりにできるかできないかがケアマネージャーの腕次第なのです。
   一度ケアプランを立てたらそれで終わり、というわけではありません。
 ケアプランは、利用される方とケアマネージャーが毎月連絡を取り合って調整をしていきます。体の状態の変化や、生活状態の変化を見逃さないためと、困ったことがないか、サービスが今のままでいいのか、ホームヘルパーさんとの相性はどうか、などをモニタリングします。
 細かいアフターケアのことも考慮すると、1人のケアマネージャーが担当できる人数は、30人から40人くらいではないでしょうか。

*国保連への請求とは?
 これはなにかというと、先ほども送迎の話でありましたが、介護サービスは国からひとつひとつ細かく値段が設定されています。これに基づいて、誰がいくら分の介護サービスを使ったかを計算するのです。そして、サービスを介護保険で定められた金額以上利用した場合は、自己負担として払っていただきます。あまりにも細かい作業で、当初はよく計算間違いをしていました。


★NPO 民間非営利組織。営利を目的としない民間組織。
★要介護認定 日常生活においてどれくらい介護が必要かを調べ、介護の必要度に応じて六段階にわけられ、その段階により介護保険で受けられる上限が決まる。
要支援6150単位
要介護116580単位
要介護219480単位
要介護326750単位
要介護430600単位
要介護535830単位

(通常1単位=10円。サービスの種類やサービス事業所の所在地によって若干異なる。)
★デイサービス 日帰り介護施設などに通い、食事や入浴の提供をうけたり、レクリエーションを行ったりすること。
★サービス事業所 実際に介護サービスを提供するところ。
★ホームヘルパー 主に身体介護と家事援助を行う。本人はもちろん、家族に対しての精神面のケア・助言もする。
ケアプラン相談中国保連提出用書類作成中これから利用者の方に会いに行くところです

*どうやったらケアマネージャーの仕事に就けるのでしょうか?
 ケアマネージャーになるには、正式名称「介護支援専門員」という資格を取ることが必要です。その資格はどうやってとるかというと、筆記試験はもちろんあるのですが、加えて実務の経験が必要とされています。
 高校生が高校を卒業してすぐに試験が受けられるかというと、そうはいかないのです。なので、一定期間(時間)以上、実際に介護施設で働いたり、看護師として医療に携わったりしなければなりません。「もとは何の仕事をしていたのか」というのが必要なのです。
 この渋谷介護サポートセンターで働いているケアマネージャーも、介護福祉士・看護師・薬剤師など、保健・医療・福祉サービスの現場に長く携わった人ばかりです。しかしそのおかげで、お互いに不得意な分野を補い合うことができ、大変助かっています。たとえば、利用者の方が処方されている薬について自分はよくわからなくても、隣に座っている薬剤師の人に聞けば詳しく教えてくれたり、また自分が詳しいことは教えてあげたりと、とてもいい環境ですよね。


★実務の経験
  T)次のいずれかの国家資格を持ち実務経験5年以上(従事日数900日以上)
→医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産婦、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士

U)相談援助の実務経験が5年以上(従事実数900日以上)
 A施設に必置の相談援助業務に従事している人
 B法律で定められた相談援助業務に従事している人
 Cその他の相談援助業務に従事している人で、
  1.社会福祉主事任用資格を取得した人
    2.ホームヘルパー2級以上またはこれに相当する研修(社会福祉施設長資格認定講習会等)を修了した人
    3.Tに掲げた国家資格を取得している人
  4.A、Bに掲げる相談援助業務に従事し、1年以上勤務した人

V)介護等の業務の実務経験が5年以上(従事日数900日以上)の人で、
 A社会福祉主事任用資格を取得した人
 Bホームヘルパー2級以上またはこれに相当する研修(社会福祉施設長資格認定講習会等)を修了した人
   CTに掲げた国家資格を取得した人
 DUのA、Bの相談業務に1年以上従事した人

W)介護等の業務に従事する人で、VのA〜Dの条件に該当しない人で実務経験が10年以上(従事日数1800日以上)

≪補足≫
 専門学校や大学・短大の福祉関連学科では、専門コースの内容によって、卒業後に介護福祉士の国家資格やホームヘルパー2級が取得できたり、社会福祉士の受験資格を得ることができたりします。詳しくは、各学校にお問い合わせください。


*ケアマネージャーの職場というと、どういうところがあるのですか?

 大きくわけると、居宅介護支援事業所と介護保険施設の二つです。居宅介護支援事業所とは、私たちのようにケアプランをつくる事務所のことです。介護保険施設とは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設(老人保健施設)、介護療養型医療施設などがあります。


*どうしてケアマネージャーの仕事に就こうと思ったのですか?

・私は施設の長をやっていたこともあって、立場的に「私がまず率先してとらなければ!」という強迫観念もありまして・・・。学校を卒業してしばらくたった私たちにとっては「試験勉強なんてもういやだわ」という気持ちもありました。しかし、今となっては、実際に利用者の方の立場にたち喜んでいただけるプランを作成できることを、大変誇りに思っています。

・病院で看護師をやっていたときに介護に携わっていて、いつのまにかとっていた、という感じです。今は、その病院をやめてここにきて、ケアマネージャーとして活動しているわけですが、病院という枠を離れて、利用者個人のために本当に役に立つケアプランは何かをのびのびと考えることができ、大変やりがいを感じています。


*ここNPOで行っているケアプランの作成と、ほかで行っているのとでは、どういう風に違いますか?

 ケアプランをたてるケアマネージャーと、それを実施するサービス事業所が同じところ(または系列会社)であったりすると、まれに「利益」という意識がでてしまうことがあります。
たとえばAさんには本当は週に一回のデイサービスしか望んでいないのに、週に二回のプランをお勧めして、利用料金を多くしたり。そうすると,本当に利用者本位での介護ができなくなってしまいます。
  ここはケアプランだけを行う独立形態の組織ですので、そういうことはありません。利用者個人の方の立場にたってプランを立て、そのプランを実行するために最適なサービス事業所を探すので、満足していただける介護サービスを提供することができるのです。おかげさまで、最近は区から頼られることも増えてきました。


*ケアマネージャーをしていて、心に残っていることはありますか?

・人というのは、若返っていくことはありえません。悲しいことですが、ケアプランを立てて差し上げても、それを実行する前に利用者の方が亡くなってしまうケースもあります。しかし、心を込めて一生懸命ケアプランを作ったことで、病院を退院した後の生活を想像することができ、それだけでも十分に満足でしたと、ご家族の方もご本人も大変喜んでくださったことがあって、その時は、私も嬉しかったです。

・生きる強さという観点から見ると、高齢者は決して「弱者」ではないと日々実感しています。高齢者の方にとっては毎日が本当にサバイバル。私たちが「もうだめだ」と思っていることでも、実はご本人は「まだまだいける」と思っていらっしゃることもしょっちゅうで、そして、それが本当に大丈夫だったりするのです! 長年生き抜いてこられたそのたくましさと多くの知恵には、感服させられることが多いです。


*ケアマネージャーとして、心がけていることは何ですか?

・1人で抱え込まないこと。
・その人の立場でものごとを考えること。
・フットワークは軽く、情報収集はこまめに。
・人の話をじっくり聞く。その人の本当のニーズが何なのかを見つけなければなりません。
・細かな配慮。
 たとえば、男性のヘルパーさんのほうが体も大きくて力も強いので、高齢者の方をおぶったり抱えたりするときはいいだろう、と思いがちですが、実は力の強い方は、力のいれ加減がなかなかわからなかったりするんですね。そうすると、おぶわれた人がちょっと華奢だったりすると大変痛い思いをするわけです。そこで、「あまり力の強すぎない方をEさんのヘルパーに」などと言ったりもします。
 また、着替えのお手伝いをするにしても、男性のヘルパーさんには見られたくないので女性のヘルパーさんにきてほしいという女性もいらっしゃいますし、その逆もあります。それに尿漏れの相談なんかはやはり、信頼できる人にしかしたくないですからね。


*高校生に一言アドバイスをよろしくお願いします。

・どんな仕事でもそうかもしれませんが、ケアマネージャーになるには、「人が好き」なことが大前提です。他人に対して自分で壁を作らないことが特に大事ですね。

・高齢者の「生きる強さ」を見習ってほしいです。
 今後高齢者が増えていくことは確実なので、ケアマネージャーでなくとも、いろんな人に高齢者や介護のことを知っていてほしいです。実際に高齢者の方と接していると、どんなに私たちケアマネージャーががんばっても、最後は家族が一番頼りになるんだなぁということを、実感します。


≪取材後記≫
高齢者疑似体験後,小学生から寄せられた感想です  介護の世界にはあまりなじみがなく、未知の世界でしたので、新しい発見が多かったです。「高齢者の生きる強さを見習ってほしい」という言葉が印象的でした。
 取材に伺っている時も、電話が鳴り続けていて、利用者の方から頼りにされているんだなぁということが伝わってきました。
 なお、こちらの渋谷介護サポートセンターは、ケアマネジメントだけではなく、介護保険の勉強会や出前介護教室、子どものための介護体験教室(高齢者疑似体験プログラム)なども実施していらっしゃいますので、興味のある方は、お問い合わせください。

  URL: http://www.shibuyakaigo.com/





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