★★★★★★★★★★ 第 二 十 三 信 ★★★★★★★★★★



 新年明けましておめでとうございます。新しい年は始まったばかりですが,私のブラジルでの活動は終り,明日は帰国です。この最後の手紙を皆さんが読まれるころには,私は既に日本で寒さに震えているだろうと思います。

<サンタ・イザベルが最高!!>
 帰国の日が近づくにつれ,「ブラジルは,そしてサンタ・イザベルは,どうでしたか?」と聞かれることが多くなりました。でも,そんなことを聞かれても,様々な思いが胸に去来してとても一言では答えられません。それでも,万感の思いを一言に集約して,「2年間でブラジルのいろんな所を旅行しましたが,やっぱりサンタ・イザベルが最高です」と答えるようにしています。どうしてサンタ・イザベルが最高なのか。最後のこの手紙で,その万感の思いを自分なりに整理してみたいと思います。

<理由その@>
水しぶきをあげるスコール 一つめは気候です。暑いといえば暑いですが,一雨降ればさわやかな風が吹いてきます。その雨も,しとしと雨ではなく,バケツをひっくり返したような激しい雨で,見ているだけで楽しく,ワクワクしてしまいます。日本では,晴れは「いい天気」,雨は「悪い天気」ということになっていますが,こちらでは雨はとても気持ちのいいもの,待ち遠しいものになりました。湿気も体にはいいようです。

<理由そのA>
田舎なのに賑やかサンタイザベル 二つめは,いつでも活気に満ちている中心街。こちらに来る前,「アマゾン河の河口近くで,人口が五万人くらいの農業がさかんな田舎町(失礼!)」と聞いて私が想像していた街とは,全然違いました。
 例えば,街には,平日の昼間でさえたくさんの人がいます。それも,子どもからお年寄りまであらゆる世代が…。日本で人口5万人の田舎町といえば,平日の昼間など歩く人もまばらで,それも多分お年寄りがほとんどではないでしょうか。  どうしてこんなに活気があるのか考えてみると,その最大の理由は,学校が2部制(午前の部と午後の部で生徒が入れ替わる)になっていることだと思います。だから昼間でも常に子どもや若者が街にいるのです。朝から夕方まで子どもが学校に閉じ込められている日本では考えられません。(「引きこもり」などという問題も,「平日の昼間は街に子どもがいるはずがない」という日本だからこそ起こる問題なのでしょう。)

<理由そのB>
なじみのポテトフライ屋さん 三つめは,イザベレンシ(サンタ・イザベルの住民)の人懐こい人柄と街の狭さ。サンタ・イザベルには日系人は多いのですが,街が小さいためかよそ者はすぐわかるらしく,どんな店でも一回行くと必ず顔を覚えられてしまいます。そして二回目以降は「おい,ジャポネ,元気か。今日は散歩か?」と既にアミーゴ(友だち)扱い。一回どころか,初めて行った電器修理の店でさえ,「直したら連絡するから」と言われ,「連絡するって…。どうやって?」と聞くと,「バイーア薬局の隣に住んでるだろ。知ってるよ」…。果ては,話したこともないのに,学校へ行く途中でよく会うというだけで,会うたびに何となくあいさつをするようになってしまった人も…。だから,オープン・エアー(なんてかっこいいものじゃありませんが)の食堂で食事をしているだけで,あらゆる人から声をかけられます。毎日通っていてもコンビニの店員とはあいさつもしない,アパートの隣人の顔も知らない,という日本の生活とは,大違い。日本という国は人間関係の希薄な国なんだなあと,しみじみ感じてしまいました。

<理由そのC>
一週間で完成した浦島太郎 四つめは,もちろん学校。サンタ・イザベルの日本語学校は,いろんな学校を見ているシニア・ボランティアの先生や外部から見学にいらっしゃった方々に,「この学校の先生方は,とてもチームワークがいいですね」と,よく言われます。50人もいる生徒の衣装を先生たちだけで作ってしまったり,エスコーラ・ニッケイから「来週文化祭をやるから日本語学校でも何かやって」と急に言われ,ふつうなら「一週間でできっこないでしょ」と断って終りそうな状況でもなんとか間に合わせてしまう。このエネルギーと団結力には信じがたいものがあります。

<理由そのD>
 そして,生徒たち。詳しいことは前回書いたのでもう書きません。きのう,ベレンで日本人会の新年会があり,そこでヨサコイソーランを踊ったのが子どもたちとの最後の活動。終わったあと,小さい子どもたちのフェイス・ペインティングを落としてあげていたら,本当にかわいくていとおしくなってしまいました。

 このように,この土地を心から好きになって帰国できる私は,本当に幸せ者です。ブラジルでお世話になった方々,日本で私を支えてくれた人たち,かわいい子どもたちに感謝。そして,JICAの活動を支えるODAは日本の皆さんの税金です。日本のすべての皆さんに感謝。こちらで生活して,日本のよさや日本人であることの幸せを痛感しました。そして,最後に,この通信を今まで読んでくださった皆さんに感謝。本当にありがとうございました。いつかブラジルに戻り,「ぶらぶら第2弾」を書ける日を夢見つつ…。

Ate mais!!(じゃあね!!)

祭りの日のサンタイザベル

2006(平成18)年1月10日


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<筆者紹介> 根橋誠。愛称「ねばプー」。1965(昭和40)年5月,長野県に生まれる。1989(平成元)年,北海道大学文学部哲学科を卒業後,桐原書店に入社。編集,営業に活躍するが,その後退社し,日本語学校教師となる。2004(平成16)年1月に,青年海外協力隊の日本語教師としてブラジルに派遣される。

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