文化・科学

◆再販制度、廃止先送り

 公正取引委員会は3月31日、新聞、書籍など著作物の再販売価格維持制度(10月の時事スコープ参照)を当面継続する見解を打ち出した。民主主義を支える「言論・報道の自由」の維持に同制度が重要な役割を果たしているとの声に配慮したためだ。ただ公取委は同時に新聞の値引き販売などを禁止した「特殊指定」規定を見直す方針も表明しており、安売りなどの過当競争をあおり、提供する情報の質的低下につながる危険をはらんでいる。

 また、公取委が「再販制度の運用の弾力化」などを関係業界に求めたことを受け、小学館では出版界の先陣を切る形で「週刊ポスト」の時限再販を決めた。雑誌の時限再販は初めて。当初は定価で販売されるが、次号が発売されると自由価格になるというもの。しかし、週刊誌は次号が出ると売場スペースの関係で返品されるのが通例で、返品せずに値下げに踏み切る書店がどのくらいあるのか、また安くなるとはいえ、一週間前の週刊誌を読者が買うかどうか、注目される。

◆キメラづくりに特許申請

 2日付の米紙ワシントン・ポストは、米国の細胞生物学者が、体の一部は人間で一部は動物という複合生物「キメラ」を作る方法に関する特許を申請したと報じた。この学者は、ニューヨーク医科大のスチュアート・ニューマン博士。博士はキメラ作りは生命倫理に反すると考えており、特許をおさえることで、他の研究者がキメラ作りに乗り出すのを封じるためだという。博士が申請した特許は人間の胚とサルの胚を混ぜたうえ、人間かサルの代理母の子宮に移して育てる技術。

◆学生相撲出身の関取が史上最多に

 春場所で、学生出身の関取が史上最多の20人になった。関取になる確率を見てみると、中卒組は1.6%、高卒組は6.9%、大卒組になると86%に跳ね上がる。相撲の世界では従来、中学を卒業してから相撲部屋に入門し、礼儀作法なども学びながら相撲技術を習得し、相撲部屋が人間形成の場にもなってきた。しかし最近は「進学率が低かった昔と違い、有望な人材は高校、大学へと流れていく」(日本相撲協会前理事長・境川親方)という。親方たちの指導力不足を指摘する声もあり、伝統的な弟子育成法の旗色はよくない。学生出身力士の隆盛による大相撲の高学歴化は、部屋制度のあり方をも揺るがそうとしている。

◆クローン羊ドリーが出産

 英国エディンバラのロスリン研究所で13日、ほ乳類として世界で初めて成獣の体細胞からつくられたクローン羊ドリーが、雌の羊を出産した。ドリーは、繁殖能力を試すために、雄羊と自然交配されて妊娠していた。子羊はボニーと名付けられた。クローン羊に正常な繁殖能力が備わっていたことを示すものだ。

◆インターネットで読書

 最近、欲しい本を簡単に見つける方法として、インターネットの書籍検索サイトが人気を集めている。中でも日本書籍出版協会の「Books」という検索サービスが人気だ。タイトルや著者名が一部でもわかっていれば情報が入手できる。一部の本は出版社のホームページに飛んで、さらに詳しい情報も得られる。

 インターネットで「仮想書店」を開いている書店も増えており、紀伊国屋書店のホームページ「BookWeb」では、約300万点のデータベースの中から、欲しい本を検索し、注文できる。早ければ4日〜1週間で手元に届く。同様のサービスは丸善、三省堂書店、旭屋書店などでも展開されている。さらに古本に関しても検索サービスが広がりつつある。

 また、インターネットを利用して、本を買うことなしに名作文学などを無料で鑑賞することもできる。作者が亡くなってから51年以上が経過して著作権の切れた作品を中心に、日本文学だけでも400点以上が公開されているという。

◆NHK発音辞典で、平板アクセント認められる

 このほど13年ぶりに改訂された「NHK日本語発音アクセント辞典」(NHK出版)では、70語について平板アクセントが認められた。この辞典は、アナウンサーが原稿を読むときの基準になっている。改訂作業はNHK放送文化研究所が一昨年から始め、全国のアナウンサーや有識者と検討を重ねてきた。

 発音に起伏のない「平板アクセント」は、若者たちの言葉の乱れとしてよく指摘されている。平板化が認められたのは「モデル」「リポーター」「スニーカー」といった外来語で、こうした言葉の発音は「かなり定着している」と判断された。しかし、平板アクセントの代表格である「彼氏」については従来通り「カ」にアクセントを置いたままとなっている。

◆中国で海賊版裁判、森村誠一さん勝訴

 中国国内では、推理小説作家の森村誠一氏の小説が無断で大量に翻訳・出版されている。出回っている小説は数十冊、計1000万部以上に及ぶといわれる。大半が著作権を無視した海賊版で、森村氏が印税を受け取ったことは一度もなかった。

 そこで森村氏が中国の出版社を相手取り、8冊について著作権侵害で約50万元の損害賠償を求める裁判を起こしたところ、このほど「出版社は4万元(約67万円)払え」という判決が出て、中国当局が「海賊版天国」の悪評を返上しようとするサインなのではないかという見方も出ている。

 中国は長い間「著作権後進国」といわれてきたが、1992年、外国の作品は許可なしでは使用できないとする国際著作権条約を批准し、国内規定を整備した。しかし、個人レベルでの裁判は極めて珍しいとみられ、今回の判決が画期的な先例になるのではないかと、森村氏は話している。

◆ブタ胎児脳細胞移植でパーキンソン病治療に成功

 米国ボストン大学の神経外科グループが、ブタ胎児を使った脳細胞移植によって中枢神経系の難病のパーキンソン病を治すことに、世界で初めて成功した。アルツハイマー病やハンチントン舞踏病などの治療にもつながる成果だという。

 医師団はブタ胎児の脳からドーパミンを生産する中脳細胞を採取。患者の頭蓋骨に穴を開け、ブタ細胞1200万個を脳内に注入した。治療を行った12人のうち9人に治療効果が表れ、車いす生活だった男性が毎週ゴルフを楽しめるようになった例まであった。

 異種移植では強い拒絶反応の可能性があるが、脳は免疫力が弱いため、今回は免疫抑制剤の服用などで拒絶反応は起きていない。


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桐原書店

98年6月4日