FACTBOOK English Logic and Expression Ⅲ タスク指導の手引き
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3習慣を伝えることができる」との目的のもとで,チェックシートを見て確認しながら話し合いをし,さらに友達の生活習慣へのアドバイスを行うSpeak活動を設けた。FACTBOOK IIのSpeak活動では,「人々が抱える健康の問題や健康のための習慣について議論することができる」ことを目的として設定し,自分の問題や習慣について考えるだけでなく,自分の世界を広げ,自身の将来のことについても考えながら,社会問題を自分事として考えられるようなタスク設定を行った。新課程ではまた学習到達目標をCAN-DOリストの形式で設定することが基本とされているが,できたかどうかの結果ではなく,できるようになりつつある過程をいかに見取り,支援を行うかが大切になる。本教科書のSpeakの活動では,FACTBOOK IやIIとは異なり,Useful ExpressionsやModel Dialogue/Discussionなどを教科書上で示すことはせず,より支援が少ない状況で自分の力を試してみることになる。ただし,内容的・言語的な支援として,Key words and expressions for thinkingやBackground Information for Thinkingでの関連語句の提示や,Speak AgainでModel Discussionの音声を聞く機会があり,適宜足場をかけながら活動を行っていくことで「できる感」を得られるように工夫をFACTBOOK IIIでは,こうしたIやIIでのタスク活動経験をベースとしながら,社会的なトピックについて論点を設定し,より直接的に論じるSpeak活動としている。例えば,上記のテーマと関連して,本教科書のUnit 6では「食品添加物の摂取について話し合うことができる」ことを目的とし,インターネット上のFAQの記事を参照しながら,その摂取の是非について議論を行う。FACTBOOK IIでは,海外での砂糖税(sugar tax)導入に関する話題についても扱っており,これまで得た気づきや知識を土台としながら,テーマ的な学びを深めていくことができるように心掛けている。上記のSpeakのタスクに先駆けて,Unit 6の冒頭のSmall Talkではカラフルなスイーツの写真を示し,食べてみたいかを考えさせている。また,Listenではより身近な状況のもとで,登場人物たちがバースデーケーキを作るにあたって,健康への配慮から気をつけるべきことについて話し合っている場面を聞く活動を設けており,Speak活動への思考的な足場がけを行っている。さらにSpeak活動の後で,Write活動で同一のトピックについて,再度自分の考えをまとめて述べるタスクを設けており,タスク間のテーマ的なつながりがより深い思考を助けるように設計している。2つ目の重要な点は,「学習」が先ではなく「使用」が先であり,まずは言葉を使ってみて,間違いながら学ぶといった指導・学習観である。現在自分が持っているリソースを最大限に生かして「使用」した経験をもとにして,内容面と言語面の両面から「学習」を行い,再度「使用」してパフォーマンスを改善する機会を設けることで,「できる感」(自己効力)を得る機会を与えることができる。学習が先で常に足場がかかった状態では,実際に自律的に使用できるか,教師も生徒もともに把握することができず,英語を使って「できること(Can-Do)」の自信を持つことが難しくなる。学習指導要領では「論理・表現Ⅰ」から「論理・表現Ⅲ」へと支援を要する度合いを減らしていくことが求められるが,「論理・表現Ⅰ」や「論理・表現Ⅱ」で培った知識・技能を用いつつ,まずは素の状態で活動に取り組み「使用」してみることで,必要な支援を探っていき,個別最適化された学習上の支援を工夫していくことが望ましい。

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