7タスク活動についての説明で示したように,「知識・技能」も「生きる力」としてとらえることが重要であり,目的を達成するために必要な知識を理解するとともに,使用する言語材料の提示がない状況でも,既習の言語材料を活用しながら技能を用いる機会を設けることが求められている。本教科書におけるその1つの場面は,各課に置かれたSmall Talkである。ここでは提示されたテーマへの気づきを促すような写真を見て,問題意識を広げたりテーマを個人化したりするための2種類の問いかけに基づいて,これまで学んだ言語材料を自由に活用しながら対話を継続する機会が設けられている。また,「知識・技能」は「思考・判断・表現」と統合的に扱うことができ,目的・場面・状況を意識したタスク活動への取り組みを通して指導と評価を行うことが可能である。本教科書では文法事項を各Unitのスピーキング活動やライティング活動と紐づけ,「使用」→「学習」→「使用」のステップの中で,課題達成にあたり「役立つ言語表現(Useful Expressions)」として扱っている。既習表現を活用しながら具体的にタスク活動に取り組む中で,必要な言語材料が不足している状況に気づいたり,さらに表現を高めたいという欲求を抱いたりすることで,学習者が文法学習に動機づけられることが期待される。こうした意味中心の活動の中で言語形式にも意識を向けるアプローチは「フォーカスオンフォーム(Focus on Form)」と呼ばれるが,これらの言語表現は談話モデル(Model Discussion / Analyzing a Presentation / Analyzing an Online Discussion)でも用いられており,文脈の中で表現の働きに気づき,使用へと意識づけることを意図している。そのため,談話の中での各発話の働きを機能ラベルで示し,やり取りや発表の談話の流れへの気づきを促している。また,文法事項と直接の関係はないが,各Unit のListen では内容的な聞き取りをした後に,Listen Again で言語表現に着目させ,コミュニケーション方略への気づきを高めている。これらの方略は巻末の折り込みで一覧となっており(Communication Strategies),タスク活動の際に参照することができる。文法説明及び演習は各Unit のタスク活動の後に意図的に置かれており(FACTBOOK GRAMMAR),個々の文法事項との関連がUseful Expressions に明示的に示されているため,必要に応じていつでも説明を参照することが可能である。各文法事項の体系的な説明や文法演習をタスク活動の合間に差し挟むと「使用」→「学習」→「使用」の流れが途切れ,パフォーマンスの改善への意識が薄れてしまうため,タイミングには注意が必要である。タスク活動を通した体験的な学びを踏まえて文法学習を行うことで,生きた力としての文法への気づきが深まる。Drills の文例もタスク内容と関連した類似表現が用いられており,使用場面を具体的に想起できるような仕掛けにしてある。Grammar in Context は,別の文脈での応用的な使用を促すためのものであり,形式に注意を払い,文法事項の使い分けが意図的にできるようになることを狙っている。3. 文法学習との連携
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