FACTBOOK English Logic and Expression Ⅱ タスク指導の手引き
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このように,学期末等の総括の段階で,「b」と「c」のどちらもあり得る場合に限り,振り返りで記述している内容が,授業における言語活動への取組の様子にいくらかでも実際に表れていれば,「c」ではなく「b」と総括することも考えられる。なお,実際に態度に表出されていることが重要であることに鑑み,言語活動に粘り強く取り組むことができている(「a」または「b」)場合は,振り返りの記述内容によって評価を変えることはしない。 単元 - 81 -[表1] 例体具のけかい問 例体具のけかい問46るための指導のプロセスであるが,自己調整のサイクルは「予見」「遂行統制」「省察」から成っており,学習開始時の学習の見通しを持ち,今後の学習を予見し,目標達成のための工夫を計画する段階で,活動への自己効力(できる感)を持っていることが重要となる。Can-Do チェックリストは「できたこと」を単にチェックするリストではなく,未来志向的にこれからの活動に主体的に取り組めそうかどうかの自信の程度を問うものである。学習途中の遂行統制の段階では,タスクの遂行におけるパフォーマンスを自己モニタリングしながら,協働的な学習を通して他者からも学びつつ,自己のパフォーマンスの改善を試みる。学習終了時には,自身のパフォーマンスを自己評価し,「できるようになった」ことを意識するとともに,さらなる改善点や今後の改善のための方略使用について省察し,内省のコメントを記述することで,次の使用や学習へとつなげていく。その際にCan-Do リストや評価ルーブリックを活用することで,より具体的に焦点化した内省が可能となり,先の発達への見通しを持った学習の指針を立てることができる。また,内省は学期に一度振り返って行うのではなく,各単元でそれぞれの活動(Can-Do)について行うことで,より細かい学習のサイクルを回すことができ,内省力をつけることにつながる。各単元末のページにはCan-Do リストを再掲しており,チェックボックスに自信の程度を記入できるようにしている。さらには,活動の途中においても,Speakの前半の活動(ディスカッションやプレゼンテーション)では,1回目のタスクの後にReflectionのコーナーを設けている(「7-6. 活動の振り返り」参照)。ライティングにおけるプロセスライティングのステップも同様のねらいから設けており,さまざまに内省活動を行いながら改善を図っていくことが望ましい(「9-5. Write:活動の振り返り」参照)。各課での振り返りには,指導用データDVD-ROMに収録されている「振り返りシート」や,生徒用教材『マイノート』を利用することもできるので,適宜活用されたい。第3編事例5することが考えられる。しかし,この例では,「c」ではなく「b」としている。それは以下の理由からである。 【主体的に学習に取り組む態度を「c」ではなく「b」とした理由】 ①以下の振り返りの記述内容から,自己調整を図ることができていると判断した。 (何を意識すれば言語活動に取り組むことができるようになるかを理解している記述例) ②振り返りに記述されていること(質問されたことの意味を確認するなど)が,1課から3課の言語活動において,実際に態度となって表れていた。 4 「自己調整」を図ることができるようにするための指導 (1)単元等における指導例(複数単元をまとめて一つの単元として指導する場合を含む) 学期末 自己紹介ができるようになってきました。でも,今日のパフォーマンステストでは,ALTの○○先生の質問に答えられませんでした。聞かれていることが分からなかったときは質問すればよかったけれど,緊張して質問できませんでした。今度は、ちゃんと聞かれたことの意味を確認したいです。 ■学習の開始時点:以下の視点から振り返りをさせる。 点視これからの学習で,さらにできるようになりたいことは何ですか。 例)読んだことについて自分の考えを詳しく話せるようになりたい。 目標設定 目標達成の自己目標を達成するために,何に努力したり意識したりすればよいですか。 ための工夫 例)仲間が使った表現を真似する。 「目標設定」では、単元における目標を設定させる。したがって、当該単元の終末に取り組む言語活動をある程度イメージさせることは有効な手立ての一つになり得る。 ■学習の途中段階:以下の指導を行う。 ・振り返りをペア等で読み合わせ,「目標設定のための工夫」について学び合わせる。 ・以下のような記述内容を紹介し考え方を広め,「がんばって話す」や「ちゃんと質問する」などの漠然とした目標しかもてない生徒の変容を促す。 (例)いつも同じ表現になってしまうので、友達が使っている表現を聞いて真似する。 相手が話したことについて質問するときは,Why?以外の質問をするようにする。 ・生徒同士が,言語活動で自己目標についてアドバイスし合う機会をもつ。 ■学習の終了及び学期末:[表1]の視点の他,以下の視点からの振り返りをさせる。 点視変容の自覚 変容の理由 これまでの学習でできるようになってきたことは何ですか。 なぜできるようになったと思いますか。 ※上表及び[表1]で示した視点を,生徒の実態等に応じて選択したり組み合わせた りして活用する。

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