FACTBOOK English Logic and Expression Ⅱ タスク指導の手引き
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4「人々が抱える健康の問題や健康のための習慣について議論することができる」ことをタスクの目的として設定しているが,自分の問題や習慣について考えるだけでなく,「保健の授業で現代人の健康について学んでいる」という状況を設定することで,より社会的な視点を与えている。2つ目の重要な点は,「学習」が先ではなく「使用」が先であり,まずは言葉を使ってみて,間違いながら学ぶといった指導・学習観である。現在自分が持っているリソースを最大限に生かして「使用」した経験をもとにして,内容面と言語面の両面から「学習」を行い,再度「使用」してパフォーマンスを改善する機会を設けることで,「できる感」(自己効力)を得る機会を与えることができる。学習が先で常に足場がかかった状態では,実際に自律的に使用できるか,教師も生徒もともに把握することができず,英語を使って「できること(Can-Do)」の自信を持つことが難しくなる。学習指導要領では「論理・表現Ⅰ」から「論理・表現Ⅱ」へと支援を要する度合いを減らしていくことが求められるが,「論理・表現Ⅰ」で培った知識・技能を用いつつ,まずは素の状態で活動に取り組み「使用」してみることで,必要な支援を探っていき,個別最適化された学習上の支援を工夫していくことが望ましい。新課程ではまた学習到達目標をCAN-DOリストの形式で設定することが基本とされているが,できたかどうかの結果ではなく,できるようになりつつある過程をいかに見取り,支援を行うかが大切になる。本教科書のSpeakの活動では,Speak Againでの再度の使用にあたり,言語的な支援をUseful Expressionsで,内容的な支援をModel DiscussionやAnalyzing a Presentationで与え,役に立つ言語表現だけでなく談話上の言語機能への気づきを高める仕掛けをしている。さらにListen to a PresentationやListen to a Discussionでインプットを確保した後に,Speak Moreで内容を膨らませて整理して,再度考えを伝える機会を設けている。なお,各Partはテーマに基づいて2つのUnitがセットとなっており,やり取りから発表活動(SI⇒SP型)へと移る課(奇数Unit)と,発表からやり取り活動(SP⇒SI型)へと移る課(偶数Unit)を設け,スキルフォーカスを変FACTBOOK Iでは同様のテーマのユニットで,「自分の生活習慣を確認し,変えたい習慣を伝えることができる」といったSpeak活動を設けており,実際にチェックシートを見て確認しながら話し合いをし,さらには続く活動で友達の生活習慣へのアドバイスを行うことに取り組んでいる。FACTBOOK IIではこうした経験をもとに,自分の世界を広げ,自身の将来のことについても考えながら,社会問題を自分事として考えられるようにしていく。上記のSpeakのタスクに先駆けて,Unit 1のListenでは海外での砂糖税(sugar tax)導入に関する話を聞き,現代人の抱える生活習慣病などの健康問題に対処する社会的な取り組みへの気づきを高めており,日本の現状について考えるための土台作りをしている。また,冒頭のSmall Talkでは大豆ミートを用いたヴィーガン用のハンバーガーや小麦アレルギーに配慮したトウモロコシを用いたパスタなど,日常で見かける健康に配慮したさまざまな食品に写真を通して触れさせ,ニーズの多様性への気づきを促しており,全体で大きな活動の流れを作っている。さらにSpeakの続きの活動として,同一のトピックに関するプレゼンテーションを聞いたうえで,再度自分の考えをまとめて述べるタスクを設けており,タスク間のテーマ的なつながりがより深い思考を助けるように設計している。

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