10本教科書では,すべてのUnitがペアでやり取りを行う活動であるSmall Talkから始まり,身の回りの内容について話しながら少しずつ足場を整えていき,徐々に社会的な内容について話したり書いたりしていくことができるよう,生徒にとって無理のない流れで活動を設計している。必ずしも毎時間の授業が本教科書のSmall Talkの場面で始まるわけではないが,その授業で行う活動内容に照らし合わせ事前に内容をインプットしたり,長期的に見て育てたい力をつけるための帯活動として行ったりするには,Small Talkは扱いやすい活動である。そのため,本教科書の冒頭に示されている問いかけ以外にも,そのUnitで扱うトピックに関連した多様な問いを教師が準備しておくことで,毎時間の導入活動としてSmall Talkを実施することができる。また,そのほかにも帯活動としてつけたい力に応じて,例えば生徒どうしがペアとなり,生徒Aにはある語を示し(生徒Bには示さない),AはBに対してその語が何かわかるように英語で説明するWord Definition GameをそのUnitで用いる語句を使って行うなどすると,教科書と関連させながら短時間で導入の活動を実施することができるだろう。さまざまな形態の言語活動を用いて,授業では英語を使うことが当たり前である環境を整えていきたい。すべての言語活動を効果的に行うには,生徒どうし及び生徒と教師間の信頼関係(ラポール)を構築することが何よりも大切である。教科書のSmall Talkは,生徒どうしが対話を継続し,生徒が互いに共感的に話に参加する基盤を作ることを意図して設定している。また,教師と生徒間のラポールを構築するためには,普段のタスク活動の場面で生徒が発言したり書いたりした内容について,必ず受け止めてもらえるという意識を生徒に持たせることが重要である。教師は生徒の英語が正しいか誤っているかを気にすることが多くなりがちであるが,教師が生徒から発信された内容について焦点を当てることなく,頭ごなしに英語の誤りを指摘するばかりでは,生徒は活動内で安心して英語を使うことができない。まずは発信された内容について受け止め,内容に関するコメントを返したり,コミュニケーションを阻害しない程度の暗示的なフィードバックを返したりすることで,生徒がコミュニケーションをしている実感を持つことによりさらなるラポール形成を可能にすると考えられる。また,評価を行う場面においても,生徒ができないことを指摘するばかりでなく,できることについて認識させ,自信を持たせていくことなどを通じて信頼関係の構築を図っていきたい。いずれにしても生徒が授業で英語を使うこと,また誤った英語を使うことに対する不安感5-1. 環境作り生徒が英語を通じさまざまな活動を行うにあたりまず重要なことは,英語を使って授業を行う環境作りである。日頃から生徒の英語による言語活動が中心となるように授業を組み立てていなければ,いざ言語活動を行おうと思っても実践することは難しい。授業の開始時には,生徒にとってハードルの高い言語活動から始めるのではなく,生徒が安心し,また楽しみながら英語を使うことができるウォームアップとしての言語活動を行い,これから英語を使う授業が始まるという意識を持たせて,英語を使うことが自然となるような環境作りを行うことが必要である。5. 活動前の準備・留意点
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