8内容について話しながら少しずつ足場を整えていき,徐々に社会的な内容について話したり書いたりしていくことができるよう,生徒にとって無理のない流れで活動を設計している。各Unitの冒頭以外でも,こうしたSmall Talkの活動をその時間で扱う内容と合わせて行うことができるが,Small Talkがなじまない場合には,同様の位置づけとなる別の活動を準備しておくことが望ましい。例えば,教科書p.131には4人グループで行うピンポンディベートの形式を示しており,この形式を用いた活動を授業の導入時に取り入れることができる。また,あまり時間が取れない場合には,生徒AとBのペアで立場を分け,ある論題に対してお互いに反論し合う簡易的なディベートの形式にしたり,生徒どうしがペアとなり,生徒Aにはある語を示し(生徒Bには示さない),AはBに対してその語が何かわかるように英語で説明するWord Definition Gameを行ったりするなど,教科書のタスクとは関連しない独立したトピックを扱い,毎時間の開始時に帯活動として実施することもできるだろう。さまざまな形態の言語活動を用いて,授業では英語を使うことが当たり前である環境を整えていきたい。すべての言語活動を効果的に行うには,生徒どうし及び生徒と教師間の信頼関係(ラポール)を構築することが何よりも大切である。教科書のSmall Talkは,生徒どうしが対話を継続し,生徒が互いに共感的に話に参加する基盤を作ることを意図して設定している。また,教師と生徒間のラポールを構築するためには,普段のタスク活動の場面で生徒が発言したり書いたりした内容について,必ず受け止めてもらえるという意識を生徒に持たせることが重要である。教師は生徒の英語が正しいか誤っているかを気にすることが多くなりがちであるが,教師が生徒から発信された内容について焦点を当てることなく,頭ごなしに英語の誤りを指摘するばかりでは,生徒は活動内で安心して英語を使うことができない。まずは発信された内容について受け止め,内容に関するコメントを返したり,コミュニケーションを阻害しない程度の暗示的なフィードバックを返したりすることで,生徒がコミュニケーションをしている実感を持つことによりさらなるラポール形成を可能にすると考えられる。また,評価を行う場面においても,生徒ができないことを指摘するばかりでなく,できることについて認識させ,自信を持たせていくことなどを通じて信頼関係の構築を図っていきたい。いずれにしても生徒が授業で英語を使うこと,また誤った英語を使うことに対する不安感を少しでも和らげ,積極的に英語を用いて言語活動を行うことができる環境を整えることが重要である。5-2. 事前準備1:活動の説明・指示本教科書では,生徒が情報や自分自身の考えなどを英語で適切に表現したり,伝え合ったりすることを身につけられるようにするため,目的や場面,状況に応じた効果的な表現を学習し,それらを繰り返し活用する機会を充実させている。生徒の言語活動を中心に授業が展開され,その言語活動が成功するかどうかは,活動を通して身につけさせたい資質や能力などの目標や,活動の目的・場面・状況といった内容を,活動を行う生徒自身が正確に理解していることが鍵となる。そのため教師は,実際の活動を行う前に活動内容の指示方法を十分に考えておく必要があり,その際に重要となることは,短く簡潔な指示を準備しておくことである。
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