FACTBOOK English Logic and Expression I タスク指導の手引き
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言語活動を通して 資質・能力を育成する 3※使用する言語材料を使って生徒とやり取りするとよい。 - 55 -(活動に取り組ませる前) ①目的や場面,状況などを理解させる。 ②使用する言語材料を明示しない。 ↓ 1 言語活動(1回目) ↓ 2 指導 ③内容面からの指導をする。 ④言語面からの指導をする。 ↓ 3 言語活動(2回目) 【②について】 「この表現を使って話しなさい」と指示したり,「ペアの一方はこのように質問し,もう一方はこのように答えなさい」といったやり取りのパターンを示したりするのではなく,目的や場面,状況などに応じて,「何を話す(聞く)とよいか」と「それを英語でどのように表現するか」を生徒に思考・判断させることが肝要である。このことは,「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせる上でも必要なことである。また,言語活動前は,使用させたい言語材料を教師が自ら使って生徒とやり取りするとよい(「移行期間における指導資料について(中学校外国語科)」の「帯活動に係る指導資料」(https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1414459.htm)参照)。なお,使用する言語材料を明示しない状況で言語活動に取り組ませることの必要性は第2編で述べているとともに事例4でも示しているので参考にすること。 【③,④について】 内容面の指導は,目的や場面,状況などに応じた発話内容になっているかという点から,いずれかの生徒の発話内容を例として取り上げ,何を伝えるとより良くなるかを全員に考えさせたり,目的や場面,状況などに応じた発話をしていた生徒の発話内容を広めたりすることが考えられる。言語面の指導は,生徒の発話を取り上げるなどしながら,単語だけによる発話を文にさせること,語順の誤りを修正させること,日本語での発話を英語にさせることなどを行うことが考えられる。なお,誤りの訂正については,生徒の発話内容をまずは受け止めるという姿勢を大切にした上で,過度に正確さを求めすぎず,長いスパンで少しずつ正確さを高めようとする指導観をもって指導に当たることが大切である。また,上述した内容面及び言語面の指導を1回の指導で全て行うことは時間的に現実的ではないため,生徒の実態や指導の状況を踏まえ指導することの焦点化が必要だと考える。加えて,いずれの指導についても,それらを確実に行うためには意図的な机間指導が必須である。言語活動に取り組んでいる生徒の発話に耳を傾ける際は,漠然とその様子を見聞きするのではなく,生徒の発話の何を聞き取るか,その視点を明確にもつことが大切である。 (2)パフォーマンステスト実施後の指導 ・生徒一人一人に,それぞれの観点の評価結果を示し,できるようになったことを認める。その上で,自分自身で成果や課題を明らかにさせ,次の課に向けた目標をもたせる。 ・パフォーマンステスト中にみられた各観点の「a」または「b」の発話をいくつか示し,引用している部分や自分の考えなどを理由とともに話している部分に下線を引かせる。そのことにより,どのような発話をするとよいかを改めて自覚できるようにする。 では,「思考・判断・表現」の評価規準例として,「料理してみたい世界の料理について説明するために,世界の国々の食文化について書かれた説明文を読んで,概要や要点を捉えている。」(読むこと)や「外国の人に「行ってみたい」と思ってもらえるように,町や地域について,情報や考え,気持ちなどを理由とともに話して伝えている。」(話すこと[発表])が示されている(「英語コミュニケーションⅠ」の設定例,下線部は筆者)。概要や要点を理解する力や,情報や意見を伝える力といった技能面を意識した能力記述に加えて,下線部のように言語活動の目的や場面,状況等を,受容技能,産出技能を問わず,明示している。下記の図は参考資料の「中学校編 外国語」で示された図であるが,パフォーマンステストに至るまでの指導において,言語活動を通して3つの資質・能力を育成するアプローチが示されており,高校において指導と評価を一体化させるうえでも参考になる。言語活動に取り組ませるうえで1つ目の重要な点は,目的・場面・状況を示した指示文を与えるだけでなく,いかにテーマへの興味・関心を高め,自分事としてとらえさせ,個人的な関与を深めさせるかである。目的意識や相手意識を持たせ,課題達成のイメージを具体的に想起させることは,達成に向けた方略の工夫へと動機づけ,真の意味で生きた言語活動に取り組んでいる感覚を得ることにつながる。例えば,本教科書のUnit 2のSpeak①では,「友達に新しい書店の魅力を紹介し,一緒に行くように誘う」ことをタスクの目的として設定しているが,新しい書店の情報を紹介するだけでなく,なぜ紹介するのかという目的をさらに設けている。目の前の友達が一緒に行きたいと思うにはどのように魅力を紹介したらよいかを考えさせることで,友達から共感を得ながら,論理的に説得することができるコミュニケーション能力を育む。タスクに先駆けて,Listenではオンラインショッピングにより実店舗の書店が少なくなりつつある現状への問題意識を高めており,1つの問題解決の方策として,こうした新しいタイプの書店の魅力についてより共感的に考える土台作りをしている。また,冒頭のSmall Talkでは自分や友達の購買行動について考えることで自分事としてとらえることを促しており,全体で大きな活動の流れを作っている。さらにSpeak②では,古民家のリノベーションなどの社会的な動きについて関心を持たせ,変わりつつある町並みの変化に意識を向けて説明をさせるタスクを設けるなど,タスク間のテーマ的なつながりがより深い思考を助けるように設計している。2つ目の重要な点は,「学習」が先ではなく「使用」が先であり,まずは言葉を使ってみて,間違いながら学ぶといった指導・学習観である。現在自分が持っているリソースを最大限に生かして「使用」した経験をもとにして,内容面と言語面の両面から「学習」を行い,再度「使用」してパフォーマンスを改善する機会を設けることで,「できる感」(自己効力)を得る機会を与えることができる。学習が先で常に足場がかかった状態では,実際に自律的第3編事例1

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