探求 論理国語 ダイジェスト版
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 5きうつうきむ 1「こころ」 2概括 (一八六七~一九一六)が一九一四年に発表した長編小説。「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の三部から成り立ち、大学生の「私」と、彼が「先生」と呼ぶ男の孤独な内面が描かれている。内容のあらましや要点をまとめること。いささか唐突漱そ石せ中期の小説「こころ」の冒頭の一節を読むと、「淋しい人間」という謎めいた言葉が、いささか唐突に、それだけにいかにも気にかかるしかたで現れてくる。一見さりげなく、主人公の会話に挟まれた日常語だが、作者はこの一語によって、ほとんど性急なまでに、ひと息に主人公の内面を概2括しようとしているように見える。「私は淋しい人間です。」と先生はその晩またこの間の言葉を繰り返した。「私は淋しい人間ですが、ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。私は淋しくっても年を取っているから、動かずにいられるが、若いあなたはそうはいかないのでしょう。動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かにぶつかりたいのでしょう。……」「私はちっとも淋しくはありません。」「若いうちほど淋しいものはありません。そんならなぜあなたはそうたびたび私夏な目め漱そ石せ山やま崎ざき正まさ和かず   ― 「1こころ」を通じて淋さしい人間論文を読む211 淋しい人間 ――「こころ」を通じて4610論文を読む 〈Ⅰ部〉

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